今年は冷夏との予想もあったようですがやはり夏は暑し、スイカの美味しい季節となりました。スイカ大好きの私ですが万年ダイエット中の身の上、あまり食べられないのが残念です。
昔中国へ行った時の事ですが、あちらでは夏場はお茶代わりにスイカを出す習慣があるようですね。訪問する先々でスイカを出してくれるので驚きました。
しかし今のガキ(下品な言い方ですみません、お坊ちゃんお嬢ちゃん 笑)ってスイカをあまり食べないようですね、こんな美味しい物をなんと贅沢な…。
代わりにメロンでも召し上がっているのでしょうか。メロンなんて昔は重病の入院患者のお見舞いでしか食べられなかったって〜の!
3月にエフピコフェアに行った時スイカの売り場提案のコーナーがあり、そこで8分の1サイズにカットしたスイカがスタンドパックと呼ばれる袋入りで並んでいるのを目撃した瞬間、26年前にタイムスリップしたような錯覚を覚えました。
私がリスパックに入社した1988年に発売された「スイカパック」を思い出したからです。
スイカパックはその名の通りカットしたスイカ専用の塩化ビニール樹脂製(まだA-PET参入前の時代)の透明成型容器でした。
開くと左右の三日月型の本体が底辺部分で繋がっていて、カットスイカがすっぽりと入るようになっています。
付属品のスイカの絵のシールで上部と底部の4隅を留めてパック詰めは完了となります。
今思い出してもなかなかユニークな商品でスイカのカットに合わせて6種類のサイズが用意されていました。
正式名称は「スイカパックもてもて」。「モテる」と「手に持てる」をかけたんだって、くだらねえ〜(笑)。
私が正式入社前の研修の時に、講師役立った先輩社員の方が「これが今度うちで発売する新製品」と言ってサンプルを見せてくれたのが私とスイカパックの初対面でした。
その時の第一印象は…覚えてない(笑)。
何しろまだ職場に配属される前ですから新製品を見せられてもそれがどんなコンセプトで開発されたのか、市場があるのか、全くピンと来ませんでした。早い話がそんな問題意識すらなかったのですね。
スイカパックの事を思い出してから現物を見たくなりましたが、26年も前の商品なので今やサンプルすら存在しません。
せめてカタログでも、と思い色々な方に声をかけたら流石ちゃんとリスパックさんには取り置きがあり、送ってくださった本社の部長さんに後日お礼の電話を入れたらスイカパックの思い出話で盛り上がってしまいました。
他にない独自商品でありながらスイカパックはさっぱり売れず、数年後には廃盤の憂き目に合ってしまいました。時代が早すぎたのか?
私が営業に出始めてから客先でよく言われたのは先ず第一に「価格が高すぎる」。
確か1枚あたり20〜30円前後したと記憶していますが、いくらバブル期とは言えカットスイカの販売価格から換算すると包装代にそんなにかけるのは難しかったのでしょう。
それに「手に持てる」と言っても実際にはこのまま持ち運びするのは抵抗があるので結局はレジ袋が必要につき、尚更敢えて容器に入れる必要性は薄まります。
そしてもう一つは「汁漏れがして見栄えが悪い」。
前述のように底部をシールで留めるだけだったので、時間が経つとどうしてもスイカのドリップがじわ〜っとにじみ出て来てしまうのです。これは致命的でした。
当時、ファミリーマートで偶然スイカパックに入ったスイカを目撃しました(私がスイカパックを売り場で目撃したのはこれが最初で最後)。感動して思わず買い求めたら容器の底には吸水紙が敷いてあったのを覚えています。
駆け出しの営業だった私はその頃、東京は杉並区にあるサミットストアーの本部に通っていました。当時はサミットにリスパックの商品は何一つ並んでいなかったのでせっせと商談に行っていたのですが、何しろこちとら新人に毛が生えたようなもの、まともな商談など出来るはずもなく毎回秒殺されていました(苦笑)。
あまりにも毎回相手にされないのである日スイカパックを持参したら「こういう、他所に無い物を持ってきて欲しかったんだよ!」とその時初めて相手が身を乗り出したのです。
すわ、採用決定か!? 色めき立ったのも束の間、前述のコストや汁漏れの問題であえなく没になってしまいました。
それによく見ると当時のサミットの売り場はカットスイカを縦に並べた陳列方法を採用しており、それを変更してまで使う気はないと言われました。
そもそも相手の売り場もろくに見ずに営業に行く事自体がダメ営業の典型ですね、お恥ずかしい話です(汗)。今の当社の社員も同じ過ちしてないだろうな(君の事だよ、○○くん!)。
その当時は毎朝、全商品の在庫表がコンピューターから出力されていました。
勿論資料は社外秘で持ち出し禁止、しかしもう時効ですから書きますが私はよくこの在庫表をコピーして客先に持参していました。
そのお客が使っている商品の在庫数を見てもらい数量が残りわずかになっている物を「もうすぐ欠品しますから早く注文して下さい!」と泣きついて押し込み販売をするのです。
何しろあの時代は今では考えられない程メーカー欠品が多い暗黒期でした。
商品を切らして納期に間に合わなくなると相手に多大な迷惑をかけ、結局は自分自身が苦しむ事になるので綺麗事など言ってられません。
とにかくあの頃は上司、本社、工場、誰も助けてくれない「自分の身は自分で守れ」という社風だったのです(笑)。
いつだったかリスパックのベテラン某社員とそんな昔話をしていたら「そんな事僕たちも当たり前にやっていましたよ。」と言われてずっこけました。やはり皆考える事は同じですね(笑)。
その日も社外秘の在庫表を客先で見せながら打ち合わせをしていたのですが、在庫表を隅々まで丹念にチェックしていたお客の目がある部分で止まりました。
「な、なにこれ?」 他の商品は殆ど欠品寸前の品薄状態、もしくは既に欠品中の物が多い中、スイカパックの6アイテムだけはどれも1000〜2000ケース単位の在庫があるのを見て驚かれたのです。何しろ他商品とは桁が2つか3つ違う数量ですからね〜。
「これは欠品の心配はないですから安心して売ってください。」とPRも忘れませんでした(笑)。
とにかく売れずに失敗に終わった感のあるスイカパックでしたが、リスパック元常務の内藤さんからはメールで「スイカパックはさっぱり売れませんでしたが、当時スーパーマーケット開拓のアプローチツールとしては十分役割を果たしました。」と貴重な証言を頂きました。
私のような駆け出し営業は駄目でしたが、ベテランの先輩方はスイカパックを切り口にしてそれなりにスーパーを攻略されたのでしょうね。
もっとも某先輩社員が出した「次はメロンパックが欲しい。」と言う要望は流石に却下されていましたが(笑)。
しかし続いての内藤さんのコメントには思わず耳を(メールなので目を、か?)疑いました。「在庫処理に苦慮したものの元はとったと記憶している。」
え〜〜〜!!! あんなにも売れなかったスイカパックが元がとれた???
26年目にして知る驚愕の真実!?本当だとしたら私にはかなりの衝撃です。
そもそもメーカーと言う業種は初期投資(金型代とか販促費)を償却後は(売価を下げない前提ですが)売れば売るほど莫大な利益を生むものなのです。
あんなにも売れなかった(先程から何度も売れなかったを強調してすみません!)スイカパックですら元手だけは回収出来るのだから(つまり初期投資分だけはペイしたと言う事でしょう)、多くの売れ筋商品はそれこそどれだけ金の成る木なのか…。
やはりメーカーさんと言うのは本当に儲かるものなんだなあと改めて実感。
我々問屋業のように少ないマージンで商品を右から左に横流ししている者からすると羨ましい限りです。隣りの芝生は青く見えるってか(笑)。
26年前のスイカパックは市場に受け入れられなかったものの、近年のリスパックさんは水元仁志先生のブルーオーシャン戦略を意識した、他社にない新製品を続々と発売されています。四葉のクローバーやハートを象ったり、女性デザイナーがプロデュースした個性あふれる容器はマンネリ化した売り場からの脱却を願うユーザーから支持され、売上と利益に大きく貢献しているそうです。
信念を持って独自路線を徹底的に貫き通す姿勢が現在の好調に繋がっているのだと思いますが、そのチャレンジ精神は四半世紀以上も前から受け継がれて来たものである事をスイカパックは象徴していたのではないでしょうか。
1ケースたりとも販売する事が出来なかったほろ苦い思い出が蘇りますが、我が青春の?スイカパックに乾杯です(最後は綺麗にまとめました 笑)。
ちょうどこの原稿を書き終えた矢先、ショッピングモールの家電売り場で今回のテーマに相応しく、スイカとメロンがサーキュレーターの風に揺られているのを目撃しました(笑)。
特別付録は独自化を徹底追求したリスパックさんの今年の秋〜冬向け提案です。(こちらをクリック)
梅雨がずれ込んで今月は雨の日が多かったですが、私が入手したのがレインメーカーアンブレラです。 文字通り、カネの雨が降る!?しかし、実際に使うのちょっと勿体無い(苦笑)。
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