FILE No. 847 「吸血鬼ゴケミドロ」

「吸血鬼ゴケミドロ」

これを書いているのは7月の中旬ですが、連日「危険な暑さ」が続いています。
この暑さの中で効果も無いのにマスクをしている連中には今や呆れるを通り越して敬意を表しますが(笑)せめて熱中症で周りに迷惑をかけないようお願いしたいものです。

私が子供の頃のテレビドラマではこの時期になると納涼特集と称して怪談ものをよくやっていました。忘れられないのが「ザ・ガードマン」の、主婦が同じ団地に住むママ友を殺してしまいその幽霊が出没する話で、あまりの怖さにギャンギャン号泣したのを覚えています(苦笑)。 作品リストをチェックしたところ、どうやら第280話(!)「怪談・幽霊団地の吸血鬼」(1970年8月14日放送)がその回のようですが、何しろ当時私はまだ5歳、そりゃあ泣きますよ!…と言うか、そもそも幼児がそんなドラマ観るなっての(笑)。

そこで今回は久々に誰も知らない?どマイナーB級作品紹介シリーズ、暑い真夏に相応しい一本として、私が小学5年生の時の夏休みにテレビで観た映画をご紹介します。
その頃は夏休み(あるいは冬休みも)になるとテレビで「夏休み(冬休み)こども劇場」と称して連日、怪獣・特撮映画をオンエアするのが常で、テレビっ子の私は楽しみに観ていました。ゴジラシリーズを始めとする東宝作品を中心に、大映のガメラシリーズやにっかつの「大巨獣ガッパ」、松竹の「大怪獣ギララ」等々が連日オンエアされる中、ある日、それまでとは明らかに一線を画す、とんでもない異色作を観てしまったのです。
その日の朝は寝坊してしまい、まだ布団の中にいた私を起こしに来た母親が「早く起きんと映画始まるよ。」と声をかけてくれました。
まだ寝ぼけ眼で「今日の映画は何?」と聞く私に、新聞のテレビ欄を先にチェックしていた母親が「え~とね、吸血鬼ギコチ!」と答えました。
吸血鬼ギコチ?変わったタイトルだなと思いつつ、テレビの前に陣取った私の前で始まったのが1968年の松竹映画、その名も「吸血鬼ゴケミドロ」でした。
全然タイトルが違うじゃねえか!?うちの母ちゃんもテキトーだよなあ(笑)と思いつつ(ま

1968年松竹「吸血鬼ゴケミドロ」

あゴケミドロも大概奇妙なネーミング!)観ていましたが、これがまたとんでもなく恐ろしい作品でした。 
以下、ストーリーの概略…

羽田を飛び立ち伊丹に向かう飛行機が舞台で、主役は副操縦士・杉坂(演・吉田輝雄)とスチュワーデスの朝倉(演・佐藤友美)、まるで血を流したかのような真っ赤な空の下、飛行機の窓に鳥がぶつかって来ては死ぬと言う不気味な前兆が何度も続き、機の目前にオレンジ色に輝く謎の光体が現れます。突如飛行機は操縦不能に陥り山中に不時着、パイロットを始め多くの人が絶命、杉坂と朝倉を含め生存者は10人のみとなりました。
その中にはテロリストにしてハイジャック犯の寺岡もおり、寺岡は武器を取って飛行機の外に逃亡、その途中で岩陰に着陸したオレンジ色に光る円盤と遭遇しました。
円盤に見入られたかのように中に入って行った寺岡の額がザクロのようにパカッと割れたかと思うと、ドロドロのアメーバ状の宇宙生物ゴケミドロがそこから体内に侵入、寺岡は吸血鬼と化し、飛行機に戻って次々と他の乗客たちを襲います。
ゴケミドロは乗客の一人にとりついてその脳を借りて自分たちの目的が地球を侵略し全人類を皆殺しにする事と宣言、恐怖心からパニックに陥った乗客たちは他人を犠牲にしてでも自分だけは助かりたいという人間のエゴむき出しで一人、また一人と死んで行きます。
最後まで生き残った杉坂と朝倉の二人は襲い掛かってくる吸血鬼の寺岡にガソリンをぶっかけライターで火をつけて焼き殺す事に成功(ここで額からゴケミドロが出て来るのが不気味!)、そのまま二人は手を取り合って下山、ようやく街を発見しましたが、待っていたのは全ての人が死に絶えた地獄の光景でした。
既にゴケミドロの脅威により人類が壊滅寸前である事を知った二人が絶望的に空を見上げ、地球に向けて更なるゴケミドロの円盤軍群が接近する悲しいラストシーンで幕となりました…。

まあ流石に5年生になっていた事と、朝方のオンエアだった事も幸いして泣きはしませんでしたが、特に前述の割れた額からゴケミドロが寄生するシーンがインパクト大で、同じくテレビを観ていたクラスの友達の間でも話題になりました。
因みに弟、妹と3人で観ていたと言う悪友のA君、あまりの怖さにまず本人がギブアップし途中で外に脱出、続いて弟が離脱し、結局一番下の妹だけが最後まで観ていたそうです(笑)。
この作品、68年公開当時は何の規制も無く上映されましたが、後に海を渡りアメリカで封切られた時にはR指定(年齢制限)があったそうですから、それを堂々と夏休みの子供枠で流してしまうとはテレビも良い時代でした。
この時以来観る機会が無かったのですが、あの恐怖が忘れられずもう一度観たいと思っていたところ21世紀に入りDVD化が実現、入手して約30年ぶりに観賞しました。
そして今回、このブログを書くにあたりそれからまた約20年ぶり(通算3度目)に観返しましたが、流石に大人になった今では良くも悪くもCGを使ったリアル過ぎる昨今の特撮に目が慣れてしまっている為、55年前のそれがどうしてもチャチに見えてしまうのは致し方ありません。しかしそれでも日本の元祖SFホラーは見応え十分につき、現在はビデオオンデマンドサービスのHulu(フールー)でも視聴可能なので多くの方に観て頂きたいです。

現在、定期的にストレッチを受けに行っている先がHuluと契約しているので、いつも施術を受けながら昔のテレビドラマを楽しんでいます。もっぱら過去何度も観た「半沢直樹」「華麗なる一族」など私の好きなビジネス物の連続ドラマをを飽きもせず観ていますが、担当トレーナーの女の子は大の怖がりなので、今度「ゴケミドロ」を観せてやろうかと思案中(笑)、平成生まれが昭和のB級ホラーにどんな反応を示すのか楽しみです。