FILE No. 887 「ビデオ(2)」

「ビデオ(2)」

(前回からの続き)

78年7月、我が家にやって来たビデオ第1号には留守録用のタイマー機能もあり、この操作方法も覚えています。
主電源のスイッチをタイマー側に(この時はまだ電源入らず)、次にタイマーで録画開始時間をセット(リモコンなどまだ無いので本体の時間を手動で)、後はガチャガチャ式のチャンネルを合わせ赤色の録画ボタンをON、設定した時間になれば初めて通電され録画が開始される仕組みでした。
今では考えられませんが、このビデオは録画開始時間のみで終了時間は設定出来ませんでした。と言う事は夜8時からの1時間番組を予約したら番組が終わっても延々とテープが尽きるまで(当時は最長120分テープ)録画し続けるのです(笑)。
勿論現在のように複数の番組予約や自動的に毎週録画など夢のまた夢、おまけに一旦留守録をセットしてしまうとその間はビデオが使えないのが不便で、極力留守録は避けてリアルタイムでテレビ&ビデオの前にスタンバイするようにしていました。
ある時留守録をしたところ調子が悪く、録画開始時間になり通電されると同時にガシャーンと録画ボタンがONからOFFに戻ってしまう現象が1~2回発生しました。
79年の私の最大の楽しみは4月4日からスタートした水曜日夜7時、待望の新作、アニメ版の「ザ・ウルトラマン」で、勿論毎週水曜日は欠かさず録画していました。
その為、水曜日の夜だけは絶対に外出したくなかったのですが、ある時通っていた(通わされていた 苦笑)塾のスケジュールの都合で、どうしても水曜に行かなければならない日がありました。正直悪い予感がしましたが、タイマーを設定して外出、帰宅してチェックすると予感的中!何も録画されておらずショックで茫然自失となりました(涙)。
納得出来ず母親にビデオの様子はおかしくなかったかを聞くと「そう言えば7時頃ガシャーンと音がした。」やはり通電と同時に録画ボタンが跳ね上がったのでしょう。早速修理を依頼したのは言うまでもありませんが、あのショックは今も忘れられません。
そんなわけで「ザ・ウルトラマン」全50話中、唯一見逃した第13話「よみがえった湖の悲しい伝説」(79年6月27日放送)、結局この回を観る事が出来たのは97年にレーザーディスク(これまた懐かしい)ボックスが発売された時ですから実に18年後(!)の事でした。
しかし、ビデオをあまりに酷使する為か修理にはよく来て貰いました。特に一番お世話になったのがビデオヘッドのクリーニングで、未だクリーニングテープも無かったのでサービスに頼るしか無かったのですが、係の人も驚く程ヘッドが真っ黒、あまりにすり減っていてヘッドそのものを新しいのと交換して貰った事もありましたが、これが結構高いのです(涙)。

我が家のビデオはいわゆるβ(ベータ)でしたがもう一つほぼ同時期に参入し後に世界の主流となるVHSと言う規格がありました。

β(上)とVHSのビデオテープ、全く互換性が無いのが消費者には大迷惑

β陣営はソニー、東芝、NEC、そしてVHS陣営は日本ビクター、松下電器、シャープと別れ熾烈なシェア争いが始まりましたが、とにかく困るのはβとVHSでは全く互換性が無い事で、例えば自分がβで録画したビデオテープを友人に貸してあげたとしても、彼のビデオがVHSなら再生出来ません。写真を見て頂ければ分かるようにそもそもビデオテープの大きさが全く違いますから(笑)。
こう言うのは通産省の管轄かと思いますが、何で最初から規格統一が出来なかったのか?親方日の丸のお役所仕事をしてんじゃねえ(笑)!
80年代に突入し家庭用ビデオが急速に普及すると、映画やドラマ、そしてアダルトetc…ビデオソフトが大きな市場となりあちこちにレンタルビデオ店が出来ました。
同じソフトでもβとVHSの二重在庫をしなければならなかったので大変だったでしょうが、そのうちにVHSがどんどんシェアを増やし、レンタルビデオ店も「VHS専門店」が主流となりました。それにしてもかつてあれだけ雨後のタケノコの如く増えたビデオ屋もいつの間にか淘汰されTSUTAYA(ツタヤ)が独占状態に、しかしネット配信の出現によりそのTSUTAYAすらめっきり店舗を見なくなったのですから時代の変化を感じます。

VHSがβとの競争に勝利した大きな理由が長時間録画で先行した事で、79年に東芝のマックロードが世界初の3倍モード対応を実現しました。
従来の標準モードでは120分のところを3倍モードにすれば360分の長時間録画が可能になる画期的商品、いわゆる6時間ビデオの誕生に、テープ代のコストに悩まされ大半が繰り返し録画を余儀なくされていた私は(しまった!もう一年我慢してこちらを買うべきだった!)と地団駄を踏みました。
勿論わずか一年で新機種に買い替えて貰える程我が家は裕福ではありません(笑)、その時に親父が言った言葉をはっきり覚えています。
「6時間ビデオ?今でもテレビの観過ぎやのに6時間も観られたらたまらんわ、アホ!」 いやいや、録画可能時間が3倍になるだけでテレビ視聴時間そのものは変わらないと思いますが(苦笑)。
その後βの方も長時間ビデオを開発しましたが、こちらは確か2時間テープで最長4時間半でした。βはテープが小さいので保管には便利ですが、やはりより長時間録画が可能な方が市場ニーズに合っており、これがVHS勝利の原動力となったのです。

(次回に続く)