FILE No. 904 「第3期ウルトラシリーズ(2)」

「第3期ウルトラシリーズ(2)」

「ザ☆ウルトラマン」「ウルトラマン80」生誕45周年記念

(前回からの続き)

私たち世代にとって初のリアルタイム・ウルトラとなったのが「帰ってきたウルトラマン」、「ウルトラマンA」、「ウルトラマンタロウ」、「ウルトラマンレオ」の第2期ウルトラシリーズでした。
「帰マン」が始まった1971(昭和46年)には「仮面ライダー」(東映)もスタートし、開始当初は低迷していた視聴率はやがて30%を超える人気番組に、「変身!」の掛け声が流行語となり、社会現象と呼べる程の変身ブームが巻き起こりました。
この影響で特撮ヒーロー番組が月曜日から日曜日までほぼ毎日、それもゴールデンタイム(主に夜19時台)を独占する、今では考えられない夢のような時代が到来しました。
円谷プロだけでも一時期は5本の番組を同時進行で制作していた程の過熱ぶりで、あまりの供給過剰からより低年齢層を狙った内容になっていきました。ウルトラシリーズとて例外ではなく、「仮面ライダー」を意識してより派手になった変身ポーズやアクション、ウルトラ兄弟の設定が生まれ歴代ウルトラマンが共演し、さらにウルトラの父やウルトラの母まで登場してファミリー化が進み、毎回のストーリーも番組を見ている我々が感情移入しやすいように、子供が主役になるエピソードが大半となりました。
「ウルトラQ」、「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」の第1期シリーズをリアルタイムで経験したファンは第2期の頃には小学校高学年~中・高・大学生、はては社会人となっており、ウルトラの魅力であった神秘性やSF性が著しく低下し、大人が鑑賞しても満足出来るSFドラマから完全に子供(幼児)向け番組となってしまった事に失望し離れていきましたが、今振り返ってみて私はこの路線変更は間違っていなかったと思っています。
勿論第1期は素晴らしい名作揃いでしたが、もし第2期もずっと「ウルトラセブン」のようなハードなSF路線で続けていたら、そもそも番組が生き残れなかったでしょう。時代の変化にだけは誰も逆らえないのです。
1973年(昭和48年)の第2次オイルショックにより原油価格が高騰、特撮番組、ことにウルトラのように通常のドラマより何倍も制作費のかかる番組には逆風となりました。
また、この頃になると怪獣ブームも下り坂、「マジンガーZ」に代表されるロボットアニメの台頭もあり第1期の頃には20~30%を誇った視聴率も「レオ」の頃には二桁を維持するのもやっとの状況で、とうとうウルトラシリーズは長い歴史にピリオドを打つ事になりました。
1975(昭和50)年3月28日、当時私は小学5年生に上がる寸前でしたが、「レオ」の最終回を観た時の気持ちは今もよく覚えています。
「ウルトラ」に限らず「仮面ライダー」(こちらも同年12月27日でシリーズ終了)にせよ幼少期のように熱狂して観ていたわけではありませんが、長い長い大河ドラマ、一つの時代の終わりに自分の青春が終わるような感覚を覚えたものです(まだ9歳なのに 笑)。
もう二度とウルトラを観る事はないのだろうと言う感慨に浸り、ちょうどこの年からプロ野球、そして生涯付き合う事となるプロレスを観始めていたので、興味の対象はそちらに移っていきました。何しろまだまだ子供ですから野球やプロレス以外にもテレビ、芸能、遊び、趣味も多彩、それらに熱中してウルトラのウの字すら忘れていました。
しかし、人生とは何が起こるかわかりません。
1978(昭和53)年、私が中学生になる年、関西地区では夕方の1時間枠で突如「帰ってきたウルトラマン」の再放送が始まり、その後続いた「セブン」、「A」…を懐かしく観ているうちに幼少の頃の血が騒ぎだしたのか、いつしかすっかり「ウルトラ」にはまっていました。

ファンコレがブームに点火
(朝日ソノラマ発行)
*写真は第1期シリーズ特集

これは私だけでなく全国でも同じで、かつてのファンたちがノスタルジックな気持ちで熱狂し始めていました。同年、今でも宝物として実家に大切に保管してあるファンタスティックコレクションシリーズ「ウルトラマン」(朝日ソノラマ刊行)が発売されましたが、これはやはり少年時代に「ウルトラ」に熱狂した世代が社会人となり編集制作したもので、これまでには無かった大人向けの資料集として「Q」、「マン」、「セブン」の第1期を徹底的に特集した内容で、私たちのハートを打ち抜いて馬鹿売れ、翌年には第2期シリーズを特集した続編も出版されました。
再放送のラッシュは私のようなかつてのファンだけでは無く、その何倍もパイの大きい、これまでウルトラを観た事がない全国の子供たちの心にも火を点けました。
ウルトラ熱が再び蘇った当初、本屋、レコード屋、おもちゃ屋に足を運んでもウルトラに関するグッズは皆無で、おもちゃ屋のおばちゃんに「今時、ウルトラマンのおもちゃなんて無いよ。またそんなの流行ってんの?」と笑われましたが、それから半年もしないうちにお店はウルトラ関連商品で溢れるようになりおばちゃん目を回していましたよ(笑)。
まさに歴史は繰り返す、前回書いた第1期と第2期の狭間と全く同じ現象が起こったわけでウルトラの生命力には驚くばかりですが、このフィーバー(←当時の流行語、今や死語 笑)ぶりにとうとう待望の新作がブラウン管に帰って来る事となりました。

第3期ウルトラシリーズ

「ザ☆ウルトラマン」(*アニメーション作品) 1979(昭和54)年4月4日~1980(昭和55)年3月26日 (全50話)

「ウルトラマン80」 1980(昭和55)年4月2日~1981年3月25日
(全50話)

これは当時から感じていた事ですが、昔も今も、第1期、第2期と比べると「第3期ウルトラシリーズ」と言う呼称自体、あまり定着していない気がしていました。
第1期が3作(「Q」、「マン」、「セブン」)、第2期が4作(「帰マン」、「エース」、「タロウ」「レオ」)に対し2作品しか続かなかった事、「ザ☆ウル」がアニメでこれまでのシリーズと全く違う世界観で描かれ番外編のニュアンスが強い事も原因でしょうが、正直に言うと両作品の人気・知名度の問題と思われます。
前述の朝日ソノラマのファンコレも、番組が終了してもとうとう第3期の特集本は作られませんでした。当時のファン仲間は「80やザ☆ウルの本を作っても売れないからだろう。」と断言していましたが(苦笑)図星でした。
(*後年、「ウルトラマン白書」のタイトルで第1期~3期までの総集編として発売された。)

私が「ザ☆ウルトラマン」の放送開始を知ったのは確か78年の暮れ、スポーツ新聞の小さな記事でした。
「現在、書籍、レコード、おもちゃとウルトラブームが過熱しておりこの人気を受けて来年4月からアニメの「ザ☆ウルトラマン」放送開始が決定した。」程度の簡単な内容でしたが、新しいウルトラマンが始まるだけでも驚きなのにアニメと聞いて二度びっくりしました…。

(次回へ続く)