FILE No. 907 「第3期ウルトラシリーズ(5)」

「第3期ウルトラシリーズ(5)」

「ザ☆ウルトラマン」「ウルトラマン80」生誕45周年記念

(前回からの続き)

アニメ「ザ☆ウルトラマン」も終盤の79年末、テレビガイドの「来年4月、実写ウルトラマン復活」の特報記事に胸を躍らせました。

「80年4月、実写特撮作品のウルトラマンが帰って来る。現在、アニメの「ザ☆ウルトラマン」が放送中だが平均視聴率は11%と伸び悩み気味。ファンからはやはり実写で観たいと言う要望が多く、後番組として「ウルトラマンレオ」以来5年ぶりとなる実写特撮作品の「ウルトラマン80」の放送が決定した。新しいウルトラマンは主人公が中学校の教師であり、地球防衛軍の隊員を兼任する設定。アニメから実写特撮に戻りパワーアップするウルトラマン、果たして再び10年前のブームを呼び起こすか?」

最初「80」がそのままハチジュウと読むのか、それともエイティか悩んだものでしたが(笑)、私含め誰もが驚いたのが主人公が先生と言う設定でした。
だんだん情報が明らかになって来て、ウルトラマン80の地球での仮の姿である矢的猛(演・長谷川初範)は普段は中学校の教師、放課後と日曜日に地球防衛軍UGMの隊員となるとの事でしたが、番組が始まる前から一部ファンの間で批判の声が上がりました。
実はこの頃は「熱中時代」(78年スタート)、「3年B組金八先生」(79年10月スタート)の大ヒットによりテレビは学園もの、先生ものがブームとなっており、「ザ☆ウル」がアニメブームへの迎合と言われたのと同様今度は先生ブームへの便乗と叩かれたのです。
しかし実際に「ウルトラマン80」の企画が始まったのは「ザ☆ウルトラマン」がまだ折り返し地点にも着かない79年の夏でした。
そして「金八先生」の放送開始は前述の通りその三か月後で視聴率が爆発的に上がったのは年が明けてから、ちょうどそのタイミングで同じ中学教師が主役の「80」が始まったので、真似と捉えられましたが全くの偶然だったのです。
予算の関係からアニメでの復活となったものの、ファンだけでなく製作当事者の円谷プロにも「やはりウルトラは実写特撮で…」の思いが強くあり、それはテレビ局(TBS)側も同じでした。「頑張って予算を確保するので来年こそは実写でやりましょう。」と局のお墨付きを得て「ウルトラマン80」は生まれました。

1980年4月、桜ヶ岡中学校に教師として赴任して来た矢的猛は実はM78星雲からやって来たウルトラマン80だった。地球上ではこの5年間一度も怪獣が出現しておらず、人々は安心しきっていたが、猛は怪獣復活の気配を察知していた。
一方もう一人、地球防衛軍UGMの隊長・オオヤマ(演・中山仁)も怪獣出現を予期していたが、オオヤマの焦りをよそに実戦経験のない隊員たちの士気は低下しきっていた。
猛はオオヤマと偶然出会い、怪獣出現の根拠を力説した。さらに猛は、怒り、悲しみ、恨み、憎しみ、嫉妬と言った、人間が持つ負の感情(劇中ではこれをマイナスエネルギーと呼称)こそが怪獣を生み出し力を与えている、だからただ怪獣を退治するだけでは駄目と考えていた。防衛軍内で孤立無援のオオヤマは猛のような男がUGMに必要と痛切に感じていたが、やがて猛とオオヤマの恐れていた通り5年ぶりに怪獣が復活する。猛はウルトラマン80に変身してこれを倒し、事件後にオオヤマは桜ヶ岡中学を訪ね、校長から猛を放課後と日曜日のみUGMに借りる許可を得る(但し他の先生や生徒には内密)。こうしてウルトラマン80,矢的猛の物語は始まった…。

ウルフェスでウルトラマン80とツーショット

怪獣を倒すだけでは片手落ち、その根源を叩き潰す為に信念を持って教育の道を選んだ矢的猛、「金八先生」のパクリなどと的外れな(前述のようにあり得ない)批判を受けながらも、何故ウルトラマンが中学の教師に?と言う疑問に、きちんと理由付けをしたのが見事でした。
また、5年ぶりの実写新作はその特撮の見事さに毎回目を見張りました。第2期ウルトラ最後の「ウルトラマンレオ」の頃はオイルショックの影響が深刻で特撮もかなりチープの感が否めず、「5年でこんなにも進化したのか!」と毎回感動と驚嘆の連続でした。
第6話で少年が円盤と対峙するシーン、第15話冒頭で宇宙を航行するスペースマミーを機底から捉えたシーンはそれぞれ「未知との遭遇」、「スターウォーズ」のパロディでしたが、これは意図的にやったそうで「そんなにお金をかけなくてもテレビでもこれぐらいの事が出来る。」と言う円谷プロの職人魂によるものでした。

物語は生徒たちのマイナスエネルギーに端を発した怪獣事件を軸に進みましたが、異変が起こったのは第11話でした。この回は何故か中学校が登場せず、話の舞台がUGMのみだったのです。最も勤務を終えた矢的猛がオオヤマに「では僕は明日学校がありますのでお先に失礼します。」と言うシーンがあり、別にこの時点ではそれほどの違和感はなく、むしろこれまで学校が中心でUGMの影が薄い事にいささか不満(SF性こそウルトラの大きな魅力)だったので嬉しかったものです。

イベント特典で貰った矢的猛の教員証

次の第12話は再び学校が舞台でしたが、結果として学校の登場はこの回が最後となりました。第13話からはUGMのみが舞台となり、SF性の高さとハードなストーリーに充実した特撮の相乗効果で「ウルトラセブン」を彷彿させる傑作が続き、このいわゆる「UGM編」を私は今でも大好きですが、14、15、16話と回が進んでも一切学校が出て来ず、劇中で何ら理由の説明も無いのには流石に??となりました。
そのうちに31話から再び路線変更、まるで第2期シリーズのように毎回ゲストの子供が主役となるストーリーとなり、これにはいささか拍子抜け、私は単純に子供が主役の話にするならもう一度中学校を出せば良いのにと感じたものです。この頃、やはり「80」を観ていたクラスメイトから「矢的猛って先生辞めたんか?」と聞かれましたが、それはこっちが知りたいです(笑)!。
地方公務員の中学教師は原則副業禁止のはず、皆にばれたからとか、あるいは続発する怪獣事件にUGMの仕事に専念する為とか、教師を辞めた(劇中では辞めたのかどうかも不明)理由を描いてくれたならまだしも一切説明なしはいくら何でも視聴者に対して不親切、恐らくテレビ局や円谷プロには多くの苦情・問い合わせがあったでしょう。
この頃ファンの同人誌が主演の長谷川初範さんのインタビューに成功、興味深く拝読しました。
「僕個人としてはストーリーがUGM中心になっても、猛が放課後に帰るシーンとかがあってもいいと思うけど、それも都合で出来なくて…」といささか歯切れが悪く、学校のシーンは保谷市(2001年に田無市と合併し西東京市となる)の実際の学校を借りて撮影していたが、遠いうえに日曜日しか使えないのでスケジュールが大変だったと語っていました。恐らくこの物理的な制約も路線変更の一因になったと思われます。
最終回への伏線として第43話からはウルトラの女戦士ユリアンこと星涼子(演・萩原佐代子)がレギュラー入り、いよいよカウントダウンが始まりました…。

(次回へ続く)