FILE No. 818 「怪奇植物トリフィドの大侵略」

「怪奇植物トリフィドの大侵略」

1月最後の更新は誰も知らない?どマイナーB級作品紹介シリーズ、今回は英国のSF作家、ジョン・ウィリアムスが1951年に発表した長編小説を取り上げます。
原題は「トリフィドの日」、邦題(日本語翻訳版)には原題そのままの他「トリフィド時代」、「怪奇植物トリフィドの大侵略」など複数ありますが、今回のブログのタイトルには子供の頃、私が最初に読んだ時のものを使わせて頂きました。「ウルトラマン80」の中の特に私が好きなエピソード(第23話「SOS!宇宙アメーバの大侵略」)と酷似しているのも気に入っています(笑)。
私がガキの頃は漫画の黄金時代、そこを入り口に読書に目覚め、「リンカーン」や「ナイチンゲール」の伝記を経て小学校高学年になる頃から推理&SF小説にはまりました。
おかげで学生時代、現代国語だけは割合点数が良かったもので(他の科目は全滅!笑)、子供の頃から本を読んでいると読解力が身に付くのを実感しました。今の若い人は活字離れが激しいと言いますが、確かに話を聞いていても説明が下手、とにかく主語が無いので「誰が?」と聞き返す場面が多い気がします。皆さんスマホを捨てて(せめて電子書籍で良いので)読書しましょう。
自画自賛はこのぐらいにして(笑)「トリフィド」の話に戻ります。
この作品は小学校の図書館で借りて読みましたが、何と言っても表紙をめくって最初に出て来る挿絵にギョギョ!何だこれは!?とインパクトを感じました。
緑色の流れ星が飛び交う夜空に浮かんだ巨大な目・・・因みにもう10年以上前、たまたま古本屋でぼろぼろ状態の同書を発見、懐かしさのあまり感動して思わず買ってしまったものです。

子供の頃、この挿絵に惹かれた…。
(著者:ジョン・ウィンダム 、刊行年: 1973年)

トリフィドとは歩行可能な食用植物で、良質の植物油が取れる為、人間によって首輪と鎖を付けた状態で大量に栽培されていました。
本編の主人公であるビル・メイスンはその栽培場で働いていましたが、誤ってトリフィドの毒で目をやられてしまい入院しました。いよいよ明日の朝には目の包帯が外せると言う夜、突然世界中の空を大量の緑色の流星雨が覆い、人々は世紀の天体ショーを楽しみました。
目の包帯が外せないビルは悔しくてふて寝しますが、翌朝目が覚めると異変に気が付きました。いくら待ってもいつものように食事が運ばれてこないし、包帯を外す約束だった医師も来ない、第一まるで人の気配がしない、不安にかられたビルが自ら包帯を外すと、そこに見えたのは恐るべき世界でした。なんと、前夜に緑色の流星雨を目撃した人々は全て失明していたのです!ビルが外に出ると街は盲人だらけでパニック状態、あちこちで火災や事故、食料の略奪が起こり都市機能は完全に麻痺、さらに大量のトリフィドが鎖を切断して脱出、人間を襲って食い殺し、人類の新たな脅威となっていました。
ビル以外にも何らかの理由で流星雨を観なかったおかげで失明を免れた人たちも少数ながら存在し、ビルは彼らとコミュニティを組みながら盲人たちの保護とトリフィドとの戦いを続けていく事になります・・・。

この小説を原作とした映像作品を年末年始にレンタルで鑑賞しました。
映画「人類SOS!」(1962年イギリス作品)、「デイ・オブ・ザ・トリフィド」(1981年イギリスのドラマ)の2作ですが、同じ原作の作品を2本続けて観るのですから私もよくよく物好きです(苦笑)。
便宜上年代の古い方を1作目、新しい方を2作目と呼びますが、ラストが人類の恐怖が未解決のまま終わる2作目の方が比較的原作に忠実な印象でした。

最初の映画化「人類SOS!」
(制作:アライド・アーティスツ・ピクチャーズ・コーポレーション)
「ザ・デイ・オブ・ザ・トリフィド」は81年にオンエア
 (番組制作:BBC)

1作目はご都合主義的に(苦笑)トリフィドの弱点が海水である事が判明(「ウルトラQ」のナメゴンか!?)勿論これは原作にない設定で、無限にある海水によって人類はトリフィドの完全殲滅に成功、目の見える人たちが中心となって新たな世界を構築するハッピーエンドとなります。
植物が歩行して人間を襲うと言う秀逸なアイディアは後に「ウルトラマン」のグリーンモンスやケロニアに受け継がれましたが、トリフィドのデザインに関しては1の方が原作に近いイメージでした。そう言えば先日、メルカリでトリフィドのフィギュアが出品されていて思わずポチりそうになりましたが、ただでさえ断捨離しなければならない立場につき必死に堪えました(笑)。
私が拍子抜け、いささか残念だったのは、1も2も夜空に緑色の流星雨が降り注ぐシーンが、空がフラッシュのように光るだけの処理だった事で、CGの無い昔とは言え世界の円谷プロならもっと壮大に描けたのでは…と思いました。日本では未映像化なので是非円谷で製作して欲しいものです。

ハエトリグサをイメージした1作目のトリフィド
(制作:アライド・アーティスツ・ピクチャーズ・コーポレーション)
2作目のトリフィドは花が特徴
 (番組制作:BBC)

奇しくもこのブログを書いている途中SNSをチェックしていたら1月4日の未明、しぶんぎ座流星群が観測出来るとのニュースを知りました。折角なので観ようかと思いましたが何しろ寒いし眠い、温かくしてとっとと寝てしまいました。何より失明が怖かったので(笑)。
もう一つ蛇足、多感な子供の頃にこの作品を読んだ為か実は私、昔から食虫植物に興味があり、毎年夏に我が家のご近所の鶴見緑地公園にて開催される「虫を食べる植物展」に何度か足を運びました(去年の夏は行きそびれた!)。
そこでは家で飼育出来る食虫植物も販売しており、これまでは手を出しませんでしたが
今年の夏はハエトリグサやウツボカズラ、サラセニアあたりを仕入れて来ようかと思っています。夏の終わり頃もしこのブログが途絶えたら…成長した植物に私が食い殺されたと思ってください(笑)。

誰も知らない作品紹介、まだまだ豊富にありますのでご期待を。おっと、その前に昨年12月のネタをそろそろ消化します。

【 追 伸 】

日米で数々のタッグ王座を獲得したブリスコ・ブラザーズ
(向かって右側がジェイ)

弟マークとの兄弟コンビ、ブリスコ・ブラザーズで活躍したジェイ・ブリスコが交通事故で急逝されました(享年38歳)。あまりにも早過ぎる旅立ちに言葉もありません…(涙)。
心よりご冥福をお祈り致します。