FILE No.851 「馬鹿は賢くならず(2)」

「馬鹿は賢くならず(2)」

(前回からの続き)

ビッグモーターの社長(当時)の「馬鹿は営業に出してはいけない。」「馬鹿は賢くならない」、大変言葉は辛辣ですが、これは間違いなく正論です。馬鹿を営業に出したらばい菌をばら撒くだけ、そのような例を沢山見てきました。

メーカーさんの馬鹿の実例を紹介しましたので、今度は随分昔に同業の社長からお聞きした、我々の同業問屋であった恐ろしい話をご紹介しましょう。
ある地方で他店舗展開していたスーパーマーケットの社長の奥様(専務)が東京に出張した際、何処かのお店でお気に入りの弁当容器を発見しました。
自分の店でも是非使いたいとその弁当を2つ購入して持ち帰り、自社が取り引きしていた2社の包材屋の営業担当に「これの同等品を提案して欲しい」と依頼したそうです。
ところがそれから待てど暮らせど返事が無く、業を煮やして催促したところ、1社の営業は「すみません、預かったサンプル無くしました!」そしてもう1社は「すみません、忘れてました!」(笑)。
それから暫く経って、この2社は揃ってばっさりと取り引き停止、全てが新規の包材屋に切り替わったそうです。
同業の社長と「恐ろしいが我々の会社でもありえる話」と口をそろえ青ざめたもので、本当に「馬鹿は営業に出すな」の極端な例です。私の推測ですが、弁当箱の件は引き金になったに過ぎず、恐らく日頃からこんな調子の対応で不平不満が鬱積し、とうとう爆発したと言うのが本当のところでは無いでしょうか。顧客が営業に不満を持っている事に気が付かなかったのか?あるいは気が付いていても長い付き合いだから切られる事はないと高を括っていたのか?いずれにせよ切られるべくして切られたと言う気がします。

メーカー、同業、よそ様の会社の話ばかりではアンフェアですので、そろそろ身内の恥を晒しましょう(苦笑)、これ以前にも書いたかもしれませんが、もう20年近く前、あるお得意先の社長との商談に当時いたある若い営業を行かせた時の話です。
その営業が帰ったと同時に、社長からうちの直属の上司(前任担当だった)に電話が入り
開口一番「おい、アホよこすなや、アホ。」 
?? 電話を受けた上司も一瞬何の事やらわからなかったそうですが、商談に行かせた営業がさっぱり日本語が通じず、まともな会話にならなかったそうです(涙)。
社長曰く、「思わず目の前のテーブルのガラス製の灰皿で頭殴ろうかと思った。」そんな事したら逮捕されます(笑)!
さらに「うちとの取り引き止めたいんやったら、止めたいってはっきり言えや。わざわざアホを送り込んで来るなんて手の込んだ事しやがって。」とまで嫌味を言われたそうで、報告を聞いて不謹慎ながら思わず笑ってしまいました(笑っている場合じゃない!苦笑)。
後日私が訪問して「アホがご迷惑をおかけしました!」と謝罪しましたが、こちらの社長さんはなんだかんだ言っても当社のファン、今も長くお取り引きを続けさせて頂いており感謝です。

今持って思い出すとお恥ずかしい話ですが、恐らくこんなのは氷山の一角でしょう。
以前から社員にも言うのですがお客様からのクレームの場合、先方は怒っているのではなく困っている、そこで不誠実な対応をするから怒りを買うのです。
お客様が営業その他、我が社の対応に一言も文句を言うでもなく、黙って他社に移行してしまう事が会社にとって一番困る事、私が氷山の一角と言うのはそう言った悲劇が我々が気が付かないところで日常茶飯事的に起こっている可能性があるからです。
考えただけで頭が痛いですが、実際私が社長になる前、社長になった後も含め明らかに営業の対応が悪く商売を失った話、取り引き停止は何度となくありました。
こういう場合担当者は保身から「うちは価格が高くて負けた」とか「先方の都合」と言い訳に終始しがちですが殆どの場合、営業の怠慢が原因で、このような悲劇を防ぐ為には顧客の不平不満を察知しいち早く手が打てる、ようは風通しの良い組織を作るしか無いと痛感させられました。
近年は役員やグループリーダーとも自らの職責をよく理解して定期的に部下との同行営業やヒアリングを行ってくれているので幸いにも大きな事故は起こっていませんが、同業も少しでもシェアを広げるべく必死にワークしているのですから常に気が抜けません。
我々のような中小が大手と互角以上に戦うには、ともすればいわゆる大企業病にかかりがちな大手と違い透明性とスピーディな対応力こそが必須条件、その為には社員一人一人のスキルアップが欠かせません。
ビッグモーターの社長の言葉「馬鹿は賢くならないから営業に出すな」(しつこい!笑)は正論ですが、繰り返すように中小は人材も乏しく、これから人の確保は益々困難になっていくでしょうから地道に社員教育を続けます。