FILE No.852 「青春の証明」

「青春の証明」

あまりの酷暑が続いた為、振り返りたくない今年の夏ですが、7月24日には推理小説作家の森村誠一先生の訃報が流れました(享年90歳)。
通算1000以上(!)の作品を生み出したまさに推理小説界の巨匠ですが、残念ながら私、先生の作品を数える程しか読んでいません。
私が最もハマっていた小学校高学年~中学生時代、もっぱら熱心に読んでいたのは森村先生のもう一つ上の世代、江戸川乱歩&横溝正史の2大巨匠だった為、シャーロック・ホームズや明智小五郎、金田一耕助のような個性的な探偵が出て来るわけでもなく、非現実的な殺人事件も起こらない森村作品は子供には逆にとっつきにくかったのかもしれません。
ただ、なんせテレビっ子だったので原作はあまり読んではいないものの映像化作品は相当数視聴しており、数ある作品群の中で最も印象的なのは何と言っても代表作の「人間の証明」です。大ベストセラーとなり映画も大ヒット、さらにドラマ化され高視聴率…「読んでから観るか、観てから読むか」(映画公開時のキャッチコピー)の通り、角川グループの今で言うメディアミックス(当時はそんな言葉すら無かった)大成功例として語り継がれています。内容的な繋がりこそ無いものの、第2弾として企画されたのが「野性の証明」で、こちらも映画&ドラマ化して成功しました。因みに映画版は薬師丸ひろ子のデビュー作として有名です。

実は「野性の証明」の前にもう一作、「青春の証明」と言う作品があったのをご存じでしょうか? 同作が発表されたのは「野性の証明」の半年前、つまり厳密には「野性の証明」は第3弾だったのです。「人間の証明」、「青春の証明」、「野性の証明」、この3つが「証明3部作」と呼ばれていますが、恒例の誰も知らない?B級マイナー作品紹介シリーズ、今回は「青春の証明」を取り上げました。

「青春の証明」DVDはなかなかの高額

天下の森村誠一先生の、それも代表作の一つが何でB級マイナーなんだよ!?とツッコミが入りそうですが(苦笑)「証明3部作」の中ではこれだけが圧倒的に知名度が低く、「人間の証明」や「野性の証明」は知っていても「青春の証明」は知らない、タイトルだけは知っているが内容はわからないと言う人がかなり多いのです。
かくいう私もその一人ですが、圧倒的な知名度不足の理由は映画化されなかった事に尽きます。映画化が見送られた理由は他の2作と比べ地味でエンタメ性に欠けるから?等、諸説あるものの本当のところはわかりません。
ドラマ化されたのがせめてもの救いですが(TBS系「森村誠一シリーズⅡ」78年11月4日~12月30日の全9話)当時の私は関心が薄かったのかリアルタイムでは観逃しており、DVDになっていたのを幸いに実に45年の歳月を経て「青春」を取り戻す事にしました(笑)。
上巻、中巻、下巻に分かれ各3話ずつ収録したDVDをTSUTAYAでレンタルしようとして目を疑いました。なんと、中巻と下巻はあるのに上巻だけが全国どの店舗にも在庫が無かったのです。上を飛ばして中と下だけ観ても仕方ないので、アマゾンやら楽天、メルカリで探すと流通量が少ない為かこれまた目を疑うようなお値段でしたが乗りかかった舟、ここまで来たら仕方なしと清水の舞台から飛び降りる心境でクリックしたと思ったら「既に在庫がありませんでした、申し訳ありません。」こんな事が2~3回連続で続きました。
やっとの事で上巻を(結構なお値段で)入手、中と下はレンタルに頼り全編視聴する事が出来ましたが、青春を証明するのも苦労します(涙)。

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昭和28年、主人公の笠岡(演・緒形拳)は霧の深い夜の公園で婚約者の麻子(演・有馬稲子)とデート中、刃物を持った暴漢に襲われかけた。現場に駆け付けた刑事は暴漢と取っ組み合いとなり返り討ちに遭い刺殺されてしまうが、笠岡は恐怖のあまり硬直、刑事を見殺しにしてしまう。犯人は逃走して行方不明となり、麻子は笠岡を「卑怯者!」と罵り去っていった。笠岡は贖罪の気持ちから殺された刑事の娘・時子(藤村志保)と結婚、さらに自分の人生を狂わせた犯人を自らの手で逮捕すべく刑事に転職した。
それから25年の月日が流れたある日、空き地で謎の変死体が発見され、その容疑者として25年前の犯人が浮かび上がる。笠岡は果たして失った青春を取り戻す事が出来るのか…。

45年ぶりに青春を取り戻せて私もすっきりしましたが、同じく青春に決着を付けたい方、上巻ならレンタルしますので(中と下はTSUTAYA行ってください)お声掛け下さい。
「青春の証明」を観たら「人間の証明」「野性の証明」も無性に観たくなって来ましたので近々発掘しようかと思います。
尚、21世紀に入り森村先生は「正義の証明」なる作品(証明シリーズ第4弾!?)も発表されており、2011年には単発でドラマ化されこちらは今でも時々BSなどで再放送されています。

私に森村先生並みの能力があれば包装業界の内幕を描いた「理不尽の証明」でも執筆したいものです(笑)。