FILE No. 871 「スクール☆ウォーズ」

「スクール☆ウォーズ」

先週の予告通り、毎回殆ど誰も知らないB級マイナー作品しか紹介しない私のブログにしては珍しく、今回は我々世代には懐かしい大人気ドラマを取り上げます。
80年代に放送された熱血学園ドラマ、「スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~」(84年10月6日~翌85年4月6日、全26話)は、馬場信浩のノンフィクション「落ちこぼれ軍団の奇跡」を原作に、山下真司演じる熱血教師・滝沢賢治が率いる弱小チームが花園の高校ラグビー全国大会で優勝するまでを描いた感動巨編で、何と言っても麻倉未稀が歌う主題歌「ヒーロー」とオープニングのナレーションを覚えている方は多いでしょう。

「スクール☆ウォーズ」と言えば「ヒーロー」、番組人気との相乗効果で大ヒット
(キングレコード)

「この物語はある学園の荒廃に闘いを挑んだ熱血教師たちの記録である。高校ラグビー界において全く無名の弱体チームが荒廃の中から健全な精神を培い、わずか数年で全国優勝を成し遂げた奇跡を通じて、その原動力となった信頼と愛を余す所なくドラマ化したものである。」
これだけでほろっと来ますが、実は昨年末にスカパー!でこの名作の全話一挙放送があり、数日かけて全話を視聴、久々にたっぷり泣かせて頂きました。本当に1話に一度は涙が出ましたので、いや~、まだまだ自分の感受性は衰えていないと自己満足に浸っていました(笑)。

さて、ここからがマイナー作品発掘の私の真骨頂!実は「スクール☆ウォーズ」には続編があったのをご存じでしょうか? 題して「スクールウォーズ2」(以下、1作目を1、2作目を2と表記)、同作品は1の終了から5年後に放送(90年9月4日~91年1月8日、全16話)されましたが、テレビのバラエティで特集されたり、度々地上波で再放送&ソフト化(ビデオ、DVD、ブルーレイ)された1と違い、全くと言っていいほど日の目を見ていませんので、リアルタイム世代ですら知らないor忘れている人が大半でしょう。
かくいう私も当時観てはいたのですが殆ど記憶が無く、1に続いてこちらも一挙放送されましたので実に33年ぶりに観返す事が出来ました。
2は軒上都丸泊の著書「八月の濡れたボール」が原作で、滝沢賢治が少年院の中に出来た県立高校の分校の生徒(ようは囚人)相手にラグビーを教え花園を目指すと言うストーリーですが、お気づきのように1とは原作者が違うのです。しかも同作品は野球を扱ったもので、「スクール☆ウォーズ」と全く関係ない作品だそうです。
それなら「スクール☆ウォーズ」に関係なく、原作に忠実にドラマ化すれば良かったのに、と思うのですが、柳の下の二匹目のドジョウ狙いで「スクール☆ウォーズ」の続編にしたのが失敗の元でした。どうしても設定に無理があり、例えば1はサブタイトルにあるように無名の弱体チームが花園で優勝するまで7年かかり、それを全26話で描いていますが、2は同じく無名チーム(しかもラグビー経験者は1人のみ!)が最終回(16話)で花園に出場(結局途中敗退)するまでの時間軸は(劇中では明確に説明はないものの)どう見ても数カ月~半年程度…いくら滝沢賢治が名監督でもそんな奇跡が起こせるか(笑)!!
そんなわけで、思い込んでいたよりは面白いとは思ったものの、設定上の粗が目立った事もあって残念ながら一度も泣けませんでした。
本放送当時、テレビ雑誌の読者投稿覧に「スクールウォーズ2を毎週観ているが1と違って一度も泣けない。俺は感動したいんだ!」と言う感想が掲載されていて私と同じだなと思ったものでしたが、視聴者が「スクール☆ウォーズ」に求めているのはとにかく感動なのです。1と比べて2が泣けない理由、今回、両作品を立てて続けに視聴して、脚本や演出の差はもとよりその違いは音楽にあると気が付きました。番組を観ていた方なら御承知の通り、1の場合前述の主題歌「ヒーロー」がドラマの最も盛り上がるシーンで使われ、そのまま次回に続くとなるのがお約束のパターン、そしてここが一番泣けるハイライトでしたが、それ以外にも「ヒーロー」をスローバラード調にしたボーカルなしのBGMが劇中でこれでもかとばかりに効果的に流れ、これがまた涙腺を緩ませてくれるのです(涙)。 
2の主題歌である丸山みゆきの「FIRE」も軽快で決して悪い曲では無いのですが、やはり軍配は「ヒーロー」に上がり、映像作品にとっていかに音楽が重要かを痛感します。

1作目の成功にあやかって2作目を作ったら見事にこけてしまった…「スクールウォーズ2」の場合、その典型的な例となってしまった感がありますが、でも実際問題ドラマにせよ映画にせよそう言った例は多い気がします。「スクールウォーズ2」だけを晒しては気の毒なので思いつくまま他にも挙げると「タイガーマスク二世」、「太陽にほえろ!PART2」、「Gメン82」…etc 「太陽にほえろ!」や「Gメン75」に続編があったなんて、知らない人の方が多いのでは(苦笑)? まあ、そうそう柳の下にドジョウは何匹もいないものです。近年の作品では池井戸潤さんの大ヒット作「半沢直樹」や「下町ロケット」ですら個人的には2作目より1作目の方が面白かったと思っています。
では逆に、人気・内容両面で、2作目が1作目を超えた代表例は…そりゃあ何と言っても「ウルトラマン」(1作目は「ウルトラQ」!)でしょう(笑)。

「スクール☆ウォーズ」屈指の名シーンと言えばバラエティ番組でも何度も紹介された第8話の滝沢賢治が「俺はこれからおまえたちを殴るぞ!」と宣言し泣きながらラグビー部員たちに鉄拳制裁を加えるシーンです。今見ても最高に泣けますが、現代ではコンプライアンス的に地上波では絶対流せそうにありません(苦笑)。
体罰を奨励するつもりは全くありませんが、家でも学校でも怒られた事すらないような軟弱なガキが社会に出て来る非情な現実を常に目の当たりにしていますので、ゆとり世代、いや今やZ世代にカルチャーショックを与える意味でも「スクール☆ウォーズ」(勿論、1作目)の地上波ゴールデンタイムでの再放送を強く願います。