FILE No. 896 「バリュー・クリエイター」

「バリュー・クリエイター」

今回も6月ネタで、この月の6日にリスパックさんのトップステージ会に参加させて頂きました。
今年の目玉は4月に兵庫県加西市に竣工したばかりの同社の関西工場の見学でしたが、総工費180億円(!)、敷地面積21000坪の最新鋭工場には感動しました。
今思い出せば35年も前、私の在職中なんてまだまだ下町の工場レベルでしたからね~(失礼!笑)。
この新工場は現在同社が力を入れ、既に同社製品の半分近くを占めるバイオマスプラスチック(植物由来の樹脂)容器の専用として稼働するそうですが、私が10年以上も前から感じていた素朴な疑問、リスパックに限らずエフピコ、シーピー化成…と食品包装容器の主力メーカーは軒並み設備増強による大増産、人口減と環境問題が益々厳しくなる中、そんなに作ってどうすんの?と言う事です。
需要の自然増が望めない以上は他所のシェアをぶんどるのが前提でしょうが、物流比率の高いこの業界は突き詰めれば運賃競争、そうなると競争力をつけるには東だけでなく西日本にも製造・物流拠点がどうしても必要と言うのが関西工場誕生の背景でしょう。生き残りをかけて今後益々シェア争いが激しくなりそうです。

工場見学の後は姫路駅前のホテルモントレに場所を移して定期総会がありましたが、ここで大松社長が話された、競争戦略としてよく言われるリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの話が強く印象に残りました。

【リーダー】
全ての事業分野を網羅する、業界における全方位型のトップ企業
(例 マクドナルド)

【チャレンジャー】
大きな特徴はないが、業界2番手の位置付け
(例 ロッテリア)

【フォロワー】
リーダーの模倣と低価格を武器に追随する企業
(例 バーガーキング)

【ニッチャー】
ニッチ分野、エリアを事業領域とする企業
(例 フレッシュネスバーガー、ラッキーピエロ)

因みに私がハンバーガーショップでよく行くのはやはりマックですが、他にも店舗数は少なくお値段も多少高めですがフレッシュネスバーガーが美味しくて好きです。

大松社長は業界のポジショニングとして自社はリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー、何処を目指すべきか思い悩んでいた時、そのいずれにも当てはまらない「バリュー・クリエイター」(大松社長の造語)を目指すべきと決断されたそうです。
直訳すると「価値を創造する人」と言ったところで、“独自の特徴を持ち、新たな価値を創造していく企業”と定義し、例としてモスバーガーを挙げていました。
モスバーガーはこれまであまり縁がありませんでしたが、そんなにバリューをクリエイトしているなら一度試食に行ってみます(笑)。
でもどうせならハンバーガーショップで無く我々包材屋にはリーダーはエフピコ、ニッチャーは〇〇と容器メーカーで例えてくれた方がリアルでわかりやすかったのですが(笑)。
前述のように今後益々企業の環境対応が求められる中、リスパックさんが新工場で造るバイオマスプラスチック容器は新しい価値を生む大きな武器となるでしょう。

一口に包装資材と言ってもかなり幅が広く、我々が殆ど縁のない工業系や医療、物流の分野、それこそドラム缶や輸出入用コンテナ等も広義では包装資材と言えます。
我々の主力品である、主に食品系の軽包材を扱う同業者は関西地区だけでも山ほどいますが、その中で自分たちは何番目なのか?
いつも言うように売り上げより利益の方針にぶれはありませんが、他所様の懐事情が分からない以上ここでは嫌でも売り上げ規模での比較となります。
一昔前まで当社は第6位ぐらいと思っていましたが、近年おかげさまで売り上げが好調、対照的に5位の会社が脱落した事もあり、控え目に見ても4位ぐらいに浮上したかもしれません。但しダントツ1位の会社は当社の7倍以上(おまけに悔しいが中身も良い)とあって逆立ちしてもかないません。
そんな中で自分たちはどのポジショニングを目指すべきなのか?これは私が社長になって以来の悩ましいテーマでした。
リーダーにはなれない、かと言って大きな特徴のない2番手(チャレンジャー)や模倣と低価格戦略(フォロワー)も自分たちが目指す方向としてはむしろ真逆、第一体力が無い会社が無理をしてそれをやると諸刃の剣です。
そんなわけでこれまではニッチャー、即ち隙間商売を追及すべしとずっと思いこんでいたのですが、大松社長の話を拝聴して目から鱗が落ち(すぐに影響される笑)うちもバリュー・クリエイターを目指すべきと気が付きました。
“独自の特徴を持ち、新たな価値を創造する” 言葉にすると簡単ですがメーカーさんでも難しいのにこれを卸売り業で実現するのは容易い事ではありません。
問屋がメーカーから仕入れて扱う商品は基本的に何処も同じ、私の立場でこう言ってしまうのは気が引けるのですが、うちで扱っているものは同業からでも入手できますし、ぶっちゃけそんなに価格差もありません(苦笑)。そもそも製造元が同じならそんなに価格差がついたらおかしいのです(苦笑)。
そうなると差別化の鍵はデリバリー面とばかり、広域な物流をアピールしている同業もいますが、これも一定規模の会社であれば条件は殆ど変わりません。
それでも会社が人で成り立っている以上、独自性や付加価値を生み出すのは人間力、そう、最後は人の勝負と信じています。
メーカーだけでなく我々問屋も生き残りがかかっていますので、地道な企業努力と社員教育を続けていく所存です。