FILE No. 905 「第3期ウルトラシリーズ(3)」

「第3期ウルトラシリーズ(3)」

「ザ☆ウルトラマン」「ウルトラマン80」生誕45周年記念

(前回からの続き)

1978(昭和53)年に巻き起こった爆発的ウルトラブームの中、待望の新作「ザ☆ウルトラマン」がアニメで放送開始と言う驚きのニュースが舞い込みました。
円谷プロはこれ以前にも実験的に「プロレスの星アステカイザー」、「恐竜戦隊ボーンフリー」、「恐竜大戦争アイゼンボーグ」など、実写特撮とアニメを合体させた作品を手掛けていましたがオールアニメは今回が初、しかも何故よりよって代表作であるウルトラマンをアニメにしたのでしょう?
この頃は「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」などの人気により若者を中心とした空前のアニメブームの真っ只中で、一部では「ウルトラブームとアニメブームを一つにまとめた安直な発想」と言う痛烈な批判もありました。
当時の円谷プロ社長・円谷皐氏(故人)はインタビューでこのように答えています。
「これまでウルトラマンをやっていて、実写の限界を感じていたんです。例えば科学特捜隊の基地にしても本当はもっと広くて色々な部屋があるはずでしょう? ウルトラマンと怪獣の格闘にしても地面に足を付けたやり方しか出来ない。僕は以前からアニメをやって見たかったんですよ。」(月刊OUT 79年4月号より)
この言葉にも一部ファンからは「情けない。(世界に誇る特撮技術で)これまで不可能を可能にして来たのが円谷プロじゃなかったのか?」との声の声が上がりましたが、実際のところは円谷も従来通り実写特撮でやりたかったのが本音でしょう。しかしこれまで書いて来た通り、「ウルトラ」の製作にはとてつもなくお金がかかり、テレビ局(TBS)から提示された予算ではとても不可能でアニメでの復活となったのが実情でした。

時は1999年(放送時の20年後)、突然地球各地の空が光輝き、続いて空にまるで象形文字のような不思議な文字が浮かび上がった。これは地球に大きな危機が迫っている予兆なのか? この異常現象を重視した地球防衛軍は危機に対処する為各エリアに怪事件専門のチームとして科学警備隊を結成した。
宇宙ステーションに勤務していたヒカリ超一郎(主人公)は、科学警備隊のメンバーに抜擢され、地球に帰還する途中、目前に現れた謎の光球に包まれ意識を失う。気がついた亜空間の中でヒカリは正体不明の宇宙人と遭遇した。
ヒカリ「君は誰だ?」
宇宙人「私はウルトラマン」
ヒカリ「ウルトラマン!?」
ウルトラマン「地球に危機が迫っている。その警告の為、私は第1種接近遭遇、光で、第2種接近遭遇、ウルトラ文字で危機を警告した。その結果、科学警備隊が結成された。そして第3種接近遭遇として今度は私自身が地球へと行く。」
しかしウルトラマンは太陽エネルギーの関係で、従来の姿では地球に長く留まる事が出来ず(エネルギーが少なくなると胸のカラータイマーが点滅、この辺りはウルトラ不変の要素として旧作を引き継いでいる)、ヒカリの身体を借りる事になった。

「ザ☆ウル」はアニメと言う事もあり、これまでのシリーズとは全く違う世界観で描かれましたが、ピグの愛称でピグモン型のロボット、トベ隊員の声で「ウルトラマン」イデ隊員役の二瓶正也さんがレギュラー出演、さらにはバルタン星人やレッドキングが登場するなど、従来のファンへのサービスも忘れていませんでした。
主人公ヒカリとウルトラマン(正式名称はウルトラマンジョーニアス)が合体する際に会話をするのは「ウルトラマン」、「帰ってきたウルトラマン」の第1話にもありましたが、「ザ☆ウル」の場合、ヒカリの身体に完全に二つの人格が同居し、シリーズ中要所要所で二人が話すシーンが登場しました。ウルトラマンばかりがヒーローとしてもてはやされる事に疑問を感じ苦しむヒカリをウルトラマンが慰め諭したり(15話)、ヒカリがウルトラマンに変身しようとするところをエネルギーと体力が残り少ない事からウルトラマンの声が制止する(19話)などの展開は従来にはなく非常に新鮮でした。昨年放送していた堺雅人の「VIVANT」で、主人公がもう一人の別人格と話すシーンにヒカリとジョーニアスを思い出したものです(笑)。
番組が始まってすぐ、スポーツ新聞に「春の新番組・初回視聴率ランキング」が発表されました。なんと!「ザ☆ウル」は水谷豊の「熱中時代・刑事編」と並んで同率首位!!
(正確な数字は失念しましたが確か19%台)これには思わずガッツポーズでしたよ(笑)。
「ウルトラマンを知らない子供たちが全く新しい作品として見てくれたのではないか。」
(同紙に掲載されたテレビ局関係者のコメント)

順調に滑り出したかに見えた「ザ☆ウル」ですが、果たして従来のファンの目にはどう映っていたのでしょうか?
この年私はあるアニメ雑誌でウルトラシリーズの私設ファンクラブ会員募集の告知を発見、早速入会しました。インターネットのない時代、アニメ、特撮に限らずプロレス然り、ファンによる同人誌活動が活発でした。
送って頂いた会報を拝読すると思った以上に「ザ☆ウル」に対し批判的な声が多く、少し驚きました。
ブームのきっかけを作った朝日ソノラマのファンコレ(前回紹介)は第1期シリーズを高く評価し、子供向けにシフトチェンジした第2期シリーズにはかなり辛辣な内容で、その影響からこの頃はファンの間に“第1期ウルトラ至上主義”が蔓延しいていました(かくいう私もその一人だったが)。頭の固い?第1期ファンにとっては内容云々以前にアニメのウルトラマンなど耐えられなかったようです。
マニア連には不評でも視聴者の大半を占める子供たちに支持されれば問題は無いのですが、こちらはどうだったのでしょう?

(次回に続く)