FILE No. 916 「東京湾炎上」

「東京湾炎上」

75年公開「東京湾炎上」
制作/東宝映画・東宝映像
配給/東宝

このブログも年内はあと2回、積み残しの10月ネタは来年に持ち越し、年末にじっくり書く事にしました。
しかしそうなると残り2回何を書こうかと思案、いざと言う時の緊急ネタを普段から仕込んでおくべきでした。そこで今回はネタが無い時の定番、誰も知らないマイナー映画をご紹介します。
なんせ前回はタイトルに偽りあり?誰も知らないどころか知らない人はいない超メジャーの「ジョーズ」(File No.910 参照)をお届けしましたので、今回はとびっきりのマイナー作品、1975年7月公開の東宝作品、「東京湾炎上」の登場です。
以前に紹介した東映の「新幹線大爆破」(File No.882 参照)も同じ年の作品ですが、この頃は特撮を駆使したこの手のパニック映画が大流行だったようです。
但しこの作品には他と決定的な違いがあるのですが、そのへんは後述致します。

田中光二「爆発の臨界」を原作とする同映画、先ずそのストーリーをかいつまんで説明します。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

原油を積んだマンモスタンカー「アラビアンナイト号」が航行中にテロ組織にシージャックされる。犯人グループは船員を人質に立てこもり原油タンクに時限爆弾を仕掛け、船を東京湾の奥深くに停止した。
思想犯である彼らの要求は金ではなく、「鹿児島県にある喜山CTS及び石油コンビナートを破壊し、その様子をテレビで実況生中継せよ。」と言う途方もないもので、要求を拒否すればタンカーを爆破すると宣言した。そうなったら東京湾に流れ込んだ原油が気化し関東一円に蔓延、それこそマッチ1本で引火し火の海となる大惨事になってしまう。
かと言って喜山CTSとコンビナートは日本の石油の12%を貯蔵しており、これを爆破する事は国家にとっての大打撃となる。
この大危機に日本政府は時間を稼げるだけ稼ぎ、前代未聞の奇策を考え出した。
犯人たちの要求を呑むふりをし、なんと、精巧なミニチュアを使った特撮によるコンビナート爆破映像で犯人を欺こうと言うのだ。
いよいよ生中継開始、現地の喜山の映像からたくみに特撮によるコンビナート爆破シーンにスイッチし、テレビを観ている犯人たちだけでなく固唾を呑んで見守る日本中の視聴者が本物の映像と騙された。作戦は成功したと思われたが喜山で突然雨が降り出し、テレビ局の調整室の画面切り替えが一瞬遅れ、爆破の特撮シーン(晴れの映像)に雨の音が被さってしまった。
犯人たちはトリックに気が付き、怒って「タンカーを爆破する!」と息巻くが…。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

そう、ここまで読んでお気づきでしょうが、この映画と他のパニック特撮映画との決定的な違いは、普通作品中では本物として使われる特撮が、あくまで“特撮”のシーンとして登場する事です。(文章力が無いのでうまく説明出来ているか不安です 苦笑)
特撮、すなわち特殊撮影とは、現実には撮影不可能なものを様々なトリックを使って本物に見せる為のテクニックですが、実際には観る人を何処まで騙せるのでしょうか。
確かにこの映画の特撮も49年も前の作品としては見事ではありますが、それでもよほど小さな子供ならまだしも大の大人ならトリックと分かりますので、それを犯人グループはもとより日本中が信じ込んでしまうあたりはツッコミどころ満載です(笑)。
もしこの映画のような事件が実際に起こったら…このブログで何回も書いて来たように私はあまり好きではないですが、現代のCGを駆使すれば一昔前とは比べ物にならない程リアルな映像は製作可能かもしれません。
しかし!今から82年も前、CGなんて便利なものが無い時代にその奇跡を実現した作品があるのです。
1942年公開の戦記映画「ハワイ・マレー沖海戦」(残念ながら私は未見)モノクロ作品と言う事もありますが、その特撮はあまりにもリアルで、ハイライトとなる真珠湾攻撃のシーンを本物と勘違いしたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が「これはどうやって撮影したのか?」と検閲対象としてフィルムを押収したと言う嘘のようが伝説があります。
制作したのは“特撮の神様”円谷英二先生、いや~、流石は世界のツブラヤだ!(←結局これが言いたかったのか 笑?)
結論として、モノクロ画面でCGを使えば大人をも騙せるレベルの映像制作が可能と言う気がします。
「東京湾炎上」に話を戻すと、日本政府は果たして関東を救えるのか?気になる方は特撮映像が大人を騙せるレベルか?と合わせチェックしてください。

来週はいよいよ今年のファイナル!