FILE No. 802 「正義は勝つ(5)」

「正義は勝つ(5)」

(前回からの続き)

社長就任からわずか1~2年の経験で世の正道を歩む事の大切さを痛感しましたが、他にも似たような話は沢山ありました。
これはまだ社長就任前、和泉市にあった漬物屋の話、印刷の入った別注のラミネート袋を受注し分割納品の約束をしていたものの、最初にほんの少し使っただけで残りの在庫を引き取ってくれなかった事がありました。先方も新商品として発売したのがさっぱり売れなかったのでしょうが、こちらとしても相手の依頼で製造したのですから何度も引き取りの交渉をしましたが、毎回煙に巻かれ知らぬ顔の半兵衛を決め込まれました。
昔はこういった事が頻繁にあって泣き寝入りするケースが圧倒的に多く、その反省から私が社長になって以降の商売に関しては全て注文書(契約書)を頂くようにしていますので(本来なら常識だがそれすら出来ていないのがこの業界)この種のトラブルやロスはほぼ皆無となりましたが、この漬物屋は古い取り引き先で、言わばルール未整備・無法地帯時代の名残でした。
結局何度交渉してもらちが明かず、金額にして80万円(!)を泣く泣く廃棄処分とし、私は営業担当に「今後この得意先からの別注は一切受注禁止、(最悪返品や転売が可能な)一般(規格)商品の取り引きのみとする」と厳命しました。
実はその前後、この漬物屋に他社から納品されていたトレイをシーピー化成さんの協力で奪取した事がありました。当時シーピー化成さんに該当する商品は無かったのですが、規格品としてカタログに掲載する事を条件に金型代を負担してくれたのです。
ところが納品が始まって1年が過ぎた頃、シーピー化成さんが突如そのトレイの廃盤を決定したからさあ大変、昔も今も同社の見切りの早さはお見事で、大々的に売り出した新商品ですら売れないとなると半年程でスパッと終売にするので見ていてすがすがしい程です(笑)。シーピーの担当者に見解を聞くと「型代までこちらで負担して作ったのに使用数量が先方から聞いていたのと全く違い製造ロットを満たしません。」との事・・・勿論、弊社の営業と雁首揃えて(笑)廃盤のお詫びと事情説明に行って貰いましたが案の定揉め、烈火の如く怒った相手は私のところにまで電話を入れて来ました。
「そっちから売り込んで来たからヨソを断って任せたのに一方的に梯子を外しやがって!おまえのところは代理店としてどう責任をとるんだ!?」と言うような内容でしたが、私からすればかつてお金を踏み倒した相手ですから心の中では赤い舌(笑)、勿論そんな事はおくびにも出さず冷静に「当初聞いていた使用数量と全く違うそうじゃないですか。」と反論、
「製造ロットにすら満たなければ廃盤にもなりますよ。御社だって(漬物の)メーカー、ロットにならないものはやらないでしょ?」と皮肉を言うとガチャンと切られました(苦笑)。当時この会社の自動包装機のメンテナンスも請け負っていましたが、何も事情を知らないメンテ担当が訪問したところ「おめえのとこの田宮って部長(当時)は…」と訳も分からずこんこんと説教されたそうです(笑)。
前述のようにこの会社の別注の仕事は引き受けない事にしていましたが、ほとぼりが冷めたと思ったのか、暫く経つと新たな依頼が来たのには正直呆れました。
あくまで推測ですが弊社に別注品を作らせた時のように業者を騙すような商談を続け、結局は他ともトラブり協力してくれる先が無くなったのでしょう。
営業担当が「今回はちゃんと注文書も発行すると言っていますがどうしましょう?」と相談して来たので「商品代金を前金で一括支払いするならOK」と返答させたところ、話は立ち消えになりました。
それから暫く経ってこの会社は突然自己破産しましたが、末期には取り引きも殆ど無かったので被害も数万円レベルで済みました。
私が日頃から「業者を必要以上に虐めたり泣かせてばかりの会社は必ず淘汰されるよ。」と口を酸っぱくして言っていたので、営業がしみじみと「散々迷惑をかけて最後はこれか、社長の予言通りですね。」と言ったものです。

もっと強烈な思い出が弊社のすぐ近所、東大阪にあった米屋の話です。
ピーク時には年商100億近くまで到達した日の出の勢いの会社でしたが、やはりここも弊社が依頼された別注の印刷入り米袋を引き取ってくれませんでした。
これまた私が社長になる前の話で、表示問題で揉めたとも聞きましたが詳しい経緯は不明、本当に私の部長~社長・初期時代(98~2001年頃)は前社長時代の負の遺産の整理ばかりで、これでは儲かるはずがないと実感したものです(涙)。
何しろ米の袋は単価が高く不良在庫金額は400万円! 誰も何もしないので、事情もわからないまま私が引き取り交渉に行きましたがけんもほろろ、何を言われてもこちらの正当性を証明するものが無く、一方的に泣き寝入りとなりました。
それから6~7年後、その米屋の女社長と幹部社員、計7人が産地偽装により逮捕されたとのニュースが飛び込んで来ました。
テレビのワイドショーで再現フィルムによるドキュメントがオンエアされていましたが、自分の面識のある人が画面に映しだされているのが衝撃的でした。
その女社長は私が会った時(そう言えば近所の打ちっぱなしでも会った事がある 笑)も業者だけでなく社員にも相当きつそうな印象でしたが、古米やくず米を国産米に混ぜて販売する犯罪行為を10年以上前から続けていたと言うのですから相当悪質、顧客から「最近米から匂いがする」中華料理店から「チャーハンの味が変わった」とクレームが相次いでも耳を貸さなかったそうです。
事が発覚したのも偽装の片棒を担ぐ事に嫌気がさした社員によるリーク(内部告発)によるもので、臭い米を売っていたら最後は自分が臭い飯を食う羽目になったと(爆笑)…右肩上がりで急速拡大、あれだけ羽振りが良かった会社はあっさり倒産、絵に描いたような転落劇でした。
この時も会長が「悪いことはしたらあかん。」と吐き捨てるように言ったのが印象に残っています。

(次回へ続く)