FILE No. 877 「クラウドへの道(2)」

「クラウドへの道(2)」

(前回からの続き)

パソコン(以下、PC)から外付けハードディスク(以下、HDD)にデータを移行中、不覚にもコードに足を引っかけて床に落としてしまい動作不能にしてしまった私、藁にも縋る心境でデータ復旧率95%を誇る専門業者に依頼しました。
先方の過去の事例からも成功すると信じて針の筵の心境で待つ事約一か月…天は我を見放した!奇跡は起こりませんでした(涙)。

以下、先方からの作業報告書を要約します。
「お預かりした内臓HDD(以下、オリジナルと記載)をクリーンルーム内で開封したところ、データを記録している円盤状の磁気ディスク(プラッタ)上にスクラッチと呼ばれる円盤状の傷が発生している状態でした。スクラッチを修復せずHDDを通電させ続けた場合、スクラッチの微細な凹凸に磁気ヘッド(データの読み書きを行う部品)が衝突し状態悪化に繋がります。そこで超音波洗浄機と特殊洗浄液を使用して全プラッタを洗浄した後、スクラッチの凹凸を軽減する為の特殊加工を施し、プラッタ表面の保護コーティングについても再形成致しました。スクラッチの発生によりプラッタ表面は深く削り取られており完全な修復は困難な状態でした。また、オリジナルの磁気ヘッドは破損していた為、互換性のある新品のHDD(ドナー)の物と交換しました。
上記の作業終了後、オリジナルを専用設備に接続しファームウエア(HDDにおける各種部品の動作プログラムの事)情報の解析作業を行い、その中からHDDの動作を制御する為の値を特定し調整を行いましたが、データへのアクセスは出来ませんでした。
ドナー磁気ヘッドの種類を変更して再度設備上でオリジナルの動作確認を実施しても変化は見られず、この事からプラッタ上のファームウエア情報がスクラッチの発生に伴って物理的に削り取られ欠損している可能性が高いと判断しました。ファームウエア情報はHDD毎に一つ一つ異なっており欠損した場合修復する事が出来ない為、復旧不可能と結論付けました。」
専門用語が多く何やらわかるような、わからないようなでしたが、とにかくこれだけ手をかけて貰っても駄目だったのです。最後の砦と期待が大きかっただけに復旧不可の連絡が来た時にはへなへなと座り込んでしまいましたよ(涙)。
それでも諦めきれず、現在の技術では無理でも将来的には復旧の可能性があるのかを質問したところ、「将来、例えばファームウエアの代替などの技術革新によって復旧の可能性はあるかと存じますが、現実的にはそう言った技術の飛躍的な向上も非常に難易度が高い物であると思われます。」と何とも玉虫色、いや殆ど気休めのような回答でした(苦笑)。

この苦い経験を経ていわゆるクラウドを導入する事にしました。従来のHDDだけでなく、クラウドと二か所でデータを保存しておけば最悪どちらかに支障をきたしても安心だからです。クラウドの事は以前から知っていましたが(と言ってもそんなに知識があるわけではない)正直半信半疑、と言うかあてにならないと言う先入観を持っていました。
何しろクラウド(雲)の言葉通り、言わば仮想空間にデータを保存するイメージなので、過去にも仮想通貨が消失した事件があったように、何かのはずみで文字通り煙の如く、データが消えたり流失してしまいそうな気がしたからです。
これまで使用のHDDのデータを全てクラウドにアップロードするのには膨大な時間がかかりましたが、いざ使ってみると大変便利な事に気が付きました。
例えば滅多に無い事とは言え古い写真データを引っ張り出す場合、これまでだとHDDを持って来てPCにコードで繋がなければなりませんが、これが結構面倒でこうやって触った時が一番事故が起こりやすいのです。どこまでもドジでそそっかしい私は、実は直近でも手が滑ってHDDを机から床に落としてしまいました。この時は動作中では無かったので支障はありませんでしたが、昨年8月に続いて同じ醜態を二度晒すとはお恥ずかしい限りです(汗)。クラウドの場合はPCの作業だけでデータにアクセス出来るので格段に楽ちんで早い、それだけで無くスマホにアプリをインストールしておけば何処からでも閲覧やダウンロードが可能なのです。おかげで暇潰しに昔の写真をチェックして再見の機会が増えました。
…と言うわけで私のような悲劇を味あわないよう様、これだけは絶対に残したいデータに関しては最低二か所での保存、特にクラウドの導入を強くお勧め致します。

2021年5月~昨年の8月初めまでの約2年分の貴重な写真が取り出せなくなったHDDは業者から返却され、今も私の手元にあります。
「相棒」season8「鶏と牛刀」(2009年12月2日初回放送)でのラスト、重要な証拠のデータが入ったCDが焼かれてボロボロになってしまったものの、杉下右京が「現在は無理でも将来は復元出来るかもしれませんので僕が持っておきます。」と語るシーンが印象に残っており、私も諦めません。。日進月歩進む技術革新によっていつの日か必ず復旧できると信じています。
出来れば私が死ぬまでにはお願いしたいものですが(笑)。

【 訃 報 】
3月10日、元新日本プロレスで全日本、ドラディションなどのリングで活躍した吉江豊選手が急逝されました(涙)。(享年50歳)心よりご冥福をお祈り致します。

2021年9月のイベントにて
兄のよしえつねおさん(右)はお笑い芸人として活躍中