FILE No. 889 「ビデオ(4)」

「ビデオ(4)」

(前回からの続き)

昭和から平成、90年代となりプロレス界は多団体時代に突入、ライフワークとしてプロレス中継の録画は相変わらず続けていましたが、80年代と違い繰り返し観る機会は激減しました。
社会人として最も忙しい時期で毎日帰宅も遅かった為、以前にも書いたようにプロレス雑誌を買ってもゆっくり読む時間が無い(File No.779782 参照)有様でしたからテレビも推して知るべし、プロレスですらそんな状態だったので、私はこの時代のドラマやバラエティ番組は殆ど知りません。
同僚の女子社員たちが夢中になって「東京ラブストーリー」(91年)の感想を話し合っていた時も私は蚊帳の外、あっ、そう言えば反町隆史&松嶋菜々子の「GTO」(98年)は年末にスカパー!で全話一挙放送をやっていましたので世間より26年遅れで初視聴しました(笑)。
乱立するプロレス団体、しかし地上波定期放送を持つのは新日本と全日本のみで、テレビを持たない他団体が頼ったのがビデオソフトでしたが、80年代は市販ソフトもマメにダビングしていた私もこの頃になるとあまりの数の多さにとてもチェック出来ませんでした。
当時の週プロに「各団体にとって大きな収入源であるビデオソフトの販売が最近不振になって来たようだ。」と言う記事が掲載されました。
要約すると「あまりの販売ラッシュによりファンもお金が持たなくなっている事、当然の事ながら各団体が次から次へと試合を行い新しい話題を提供するので、大会から数か月経ってビデオを発売してもその時には皆が次の試合に興味が移行している事が原因、ファンも楽しむのはその場限りで思い出や記憶を消費していく時代となった。」との指摘でしたが、まさにどんぴしゃりの状況でした。

93年に東京から引き揚げ実家に戻ってからもビデオは何台か買い替え、プロレス中継の録画は続けていましたが、正直惰性と化しているのは自身が一番わかっていました。
新日本プロレスは98年にアントニオ猪木が引退、全日本プロレスは99年にジャイアント馬場さんが旅立ち、2000年には選手の大量離脱(プロレスリング・ノア旗揚げ)の余波でレギュラー番組が終了、82年から始まった私の新日本&全日本の録画もこの頃で事実上ストップしました。 
勿論新日本も、全日本の後番組としてスタートしたノアの中継も視聴こそ続けていましたが、自分の中では完全保存から一度観たら消す繰り返し録画の地位に転落、またプロレスラーのテレビ出演もあまりに日常茶飯事となった為、こちらも余程の物で無い限りは一度観たら終わりとしていました。勿論、猪木さんの出演番組だけは別格で永久保存用に残していましたが。
録画を始めた時はこれをライフワークとして生涯続けるだろうと本気で思っていましたので何か淋しさを感じましたがこれも時代の流れ、反面これ以上ビデオテープが増え続けない事に幾分ほっとしたものです。
                           
21世紀に入り地上波デジタル放送がスタート(2011年にはアナログ放送完全終了)、私も2005年にビデオにおさらばして初めてDVDレコーダー(パナソニックのディーガ)を購入しました。
田舎者にはテープやDVDをセットしなくても内臓のHDDに番組が収録出来ると言うのが不思議で仕方なかったのですが(笑)、画質の美しさは元より複数番組の同時録画や自動的に毎週録画など非常に便利で、かつて泣かされたプロ野球や報道特番による時間変更での録画ミスなど遠い昔の話、とにかくビデオ時代には考えられない事ばかりでテレビ録画の世界に革命が起こった事を実感しました。
実はこのDVDレコーダーにはVHSの再生機能も付いていました。
溜まりにたまったVHSテープを少しずつDVDに変換して行こうとVHS搭載の物を購入したのですが、結局テープ数本分をやっただけで挫折してしまいました。
元来の面倒臭がりに加え昔のVHSを再生して見ると(ある程度予想はしていたものの)思った以上にノイズだらけで劣化が酷く、膨大な労力をかけてダビングしても果たしてこれを観るか?と思うと虚しくなり作業にブレーキがかかりました。
せめて3倍でなく標準モードで録画していればもう少し劣化を防げたかも、と激しく後悔しましたが、そうなると単純計算でテープの本数は3倍に膨れ上がっていたでしょうし、コストや保管スペースを考えれば当時その選択肢はありませんでした。
70年代後半~80年代の試合映像を標準モードで録画保存していたマニアは全国でもごく少数派、私の知る範囲でも片手程の人数しかおらず、中にはテレビ局にすらマスターが存在しないものもあり貴重なコレクションとなっています。
結局ダビング作業は頓挫したまま15年の歳月が流れDVDレコーダーも老朽化、今から4年前(2020年)にブルーレイレコーダー(同じくディーガ)に買い換え、さらに進化し充実した機能でストレス無く楽しんでいます。

正確には数えていませんが恐らく200本はあるだろうビデオテープは今も実家に眠ったままです。VHSの再生機が無いと視聴は不可能、かと言ってダビングする気力も無く、思いきって処分しようかとも思いましたが、それも出来ないまま現在に至っています。
まあいずれは断捨離せねばならないでしょうが、科学の世界は日進月歩、ひょっとしたらそのうち劣化した映像を完全修復して蘇らせる、殆ど魔法のような技術が誕生するかもしれません。そんな淡い期待を胸に死ぬ寸前までは保管しておきます(笑)。

次回は3月ネタの総集編!