FILE No. 906 「第3期ウルトラシリーズ(4)」

「第3期ウルトラシリーズ(4)」

「ザ☆ウルトラマン」「ウルトラマン80」生誕45周年記念

(前回からの続き)

爆発的ブームに乗ってスタートした待望の新作「ザ☆ウルトラマン」はアニメと言う事もあって、従来のウルトラファンには受け入れられませんでした。
それでも視聴者の大半を占める子供たちに人気があれば良かったのですが、現実はそう甘くありません。
この頃「てれびくん」(小学館)や「テレビマガジン」(講談社)を購読していましたが(中学生にもなって子供雑誌と笑うなかれ!資料的価値は極めて高かったのです 苦笑)、「ザ☆ウル」が始まった時「テレビくん」で「新しいザ☆ウルトラマンとこれまでのウルトラマン、どちらが好きですか?」と問う読者アンケートがありました。
読者のニーズを誌面に反映させる為なので結果発表こそありませんでしたが、翌月号を見ると答えは一目瞭然、これまでのウルトラマンの特集グラビアが巻頭に、「ザ☆ウル」のページが後に回されるようになったからです。
前述の1回目の高視聴率を分析したテレビ局関係者のコメント、「ウルトラマンを知らない子供たちが全く新しいものとして観てくれた。」…これまでのウルトラマンと全く別物として観た子たちには面白くても、昔を知っている子(再放送の影響で殆どがそうだった)にはやはり不満だったのでしょう。
「ま、これはこれで面白いけど、やはりウルトラマンは実写でないとね。」と言うのが子供から大人まで視聴者の過半数の正直な気持ちだったと思われ、視聴率も最初の勢いを持続出来ませんでした(全話平均11%)。
相変わらず夕方や早朝の時間帯では旧作のウルトラの再放送が行われておりこちらは好調、ある時など夕方の「ウルトラマンA」が22%もの高視聴率を獲得し、その週放送された全番組のランキング20位に食い込んでびっくりしました。嬉しいと同時に、本放送の「ザ☆ウル」より再放送の方が倍近い数字をとなると何とも複雑な心境でしたよ。
第1話で「ザ☆ウル」と同率首位だった「熱中時代・刑事編」はその後も最高視聴率を更新(全話平均24%)と明暗を分けましたが、それでもこの45年間何度もソフト化(LD、DVD、ブルーレイ)され今もお金を生み続けている「ザ☆ウル」に対し、何故か「熱中時代・刑事編」はソフト化は愚か再放送すら無く、まるで黒歴史のように封印されており、結局最後に笑ったのは「ザ☆ウル」だったと自己満足に浸っています(笑)。
因みに「熱中時代・刑事編」が闇に葬られた?のは、主演の水谷豊さんと共演のミッキー・マッケンジーがその後結婚したもののスピード離婚した影響だろうと推測しています(真偽不明)。

初期はオーソドックスなストーリーだった「ザ☆ウル」は、中盤にウルトラマンジョーニアスがウルトラの星U40の出身である事を明かし、ヒカリ超一郎は地球人として初めてウルトラの星を訪れます。ジョーニアス以外のウルトラ戦士も続々登場し、最終回4部作では反逆者に制圧されたU40を助ける為、ヒカリを含む科学警備隊メンバーが巨大宇宙戦艦でウルトラの星に乗り込むと言う、これぞアニメならではの壮大なスケールのスペースオペラ的展開で幕となりました。
長所のみを挙げて短所に目を瞑るのは公平ではありませんので敢えて書きますが、一方で中盤~後半にかけて難が目立って来たのも事実で、回によってアニメーターが変わる為か、同じキャラなのに明らかに顔が違うと言う事が何度かありました。
折角アニメの利点を活かす為の試みがこれでは逆ですが、ムツミ隊員役の島本須美さんによれば「アフレコに絵が間に合わない事が多かった。」 絵の無い状態でのアフレコは声優さんにとってさぞ辛かった事でしょうが、制作現場はそれほど過酷だったようです。
「ザ☆ウル」のアニメーション制作を担当したのは日本サンライズ、そう、未だ人気の「機動戦士ガンダム」と同じ会社でした。因みに同作品も「ザ☆ウル」と同じ79年4月スタートなので私などは日本サンライズが「ガンダム」にばかり力を入れて「ザ☆ウル」には手を抜いているのでは?と勘ぐっていました(苦笑)。
この頃は凄まじいアニメブームで一時期は書店で月刊(または隔月刊)のアニメ雑誌が常時5~6種類は並んでいました。この状況は数年後に勃発するプロレス雑誌大戦争(File No.779782 参照)とそっくり、今でも「アニメック」、「ジ・アニメ」、「アニメージュ」、「ファンロード」…etcとタイトルだけは覚えていますが、それらを立ち読みすると常に「ガンダム」ばかりがもてはやされていて「ザ☆ウル」は無視で悔しい思いをしました。
数あるアニメ雑誌の一つ、月刊OUTのガンダム特集で、あるライターが以下のような駄文を寄稿していました。手元に雑誌こそありませんが、内容はよく覚えていますので記憶に頼って再現します。
「先日、久しぶりにザ☆ウルトラマン(第42話)を観て、あまりの酷さに愕然とした。まず絵の荒れ、手抜きが歴然だ。このアニメ、確か最初の頃は非常に面白く、これからの展開が楽しみだと思った印象があったが、何故こんなに酷くなってしまったのか。
(以下、その回のストーリー、演出面のアラ探しが延々続く)
「ザ☆ウル」に引き換え、「ガンダム」だけはいつも安心して観る事が出来た。そこには作り手の情熱があったからだ(今度はガンダムへの賛辞)。
実写のウルトラマンは製作者たちの熱気と情熱のシンボルだった。それを失えば(ザ☆ウルのように)抜け殻になるしかない…。」
「ガンダム」を持ち上げる為「ザ☆ウル」を徹底的に貶しめる内容で、この時は本当に腹が立ちました。私、今でも一方を上げる為に何かを落とすやり方が大嫌い、そう言えばプロレスでもマリーゴールドへのヨイショでスターダムを誹謗中傷している輩がいますよ(笑)。 
サンプルとなった「ザ☆ウル」の42話は正直ストーリーとしては大した事は無かったし、作画の酷さも認めますが、大体こいつは最初は観ていて今後が楽しみとまで言っておきながら、その後は離れていったと自分でカミングアウトしている事に、おめえのようないい加減な視聴者が多いのが質の低下に繋がる理由なんだよ!とつっこみたかったです(笑)。
因みに私、ガンダムマニアの方には申し訳ないのですが未だに「ガンダム」を一度も観た事がありません。別に好きとか嫌いではなく、ただ単に興味が無かったからですが、根底にこの頃のトラウマ、ファンも雑誌も日本サンライズも「ザ☆ウル」を冷遇し「ガンダム」ばかり高待遇?と言う歪んだ嫉妬心があるのは正直否定しません(笑)。

「ザ☆ウル」も終盤にさしかかった79年の終わり頃、テレビガイドに「来年4月から実写のウルトラマンが復活!」の特報が掲載され、目を見張りました!

(次回に続く)