FILE No. 849 「ISO14001(4)」
「ISO14001(4)」
今日から9月ですが、ブログ上ではまだまだ酷暑の続いた7月ネタが続きます。
この月は環境マネジメントシステムの国際認証規格であるISO14001の更新審査がありました。
同規格を取得したのは私が社長になって3年目に突入した2002年でしたが、以後毎年7月に審査がありますので、JQA(日本品質保証機構)の審査員が来られる度に夏の訪れを実感します(夏男、ミル・マスカラスみたい 笑)。
ISOに関してはこのブログの開設初年度に当たる2007年に3回に渡って取り上げていますが(File No. 6,7,24 参照)当時とは社員も随分と入れ替わった事ですし、16年ぶりに簡単におさらいしてみましょう。決してネタ不足を補う手抜きではありませんので(苦笑)。
1年365日、社長の悩みは尽きぬものですが、私には2000年の就任時から大別すると3つの悩みがありました。それは、やれ人が辞めたとか、あのお得意先に対してどうしよう云々と言った日常業務レベル的なものでは無くもっと根源的な話です。
先ず一つ目は環境問題に対する対応で、我々の扱う包装資材は社会の営みに絶対必要ですがその反面、役割を果たすとただのゴミと化す性質のものです。ある意味最もバッシングされやすい業界にいるのですから企業としてどのように環境対応に取り組むかは大きな問題でした。
二つ目は当時に限らず現在もそうですが、星の数程同業者、つまり競合先の数が多く厳しい競争が続いていましたので、他社と差別化出来るセールスポイントを持つ事が生き残りの必須条件と痛感していました。景気の良い時代であれば皆が潤ったのでしょうが、バブルが完全崩壊しますますレッドオーシャンと呼ばれる血みどろの戦いは加速、そんな中で真っ先に淘汰されるのは体力が無く、特徴や強みを持たない会社です。
そして最後、ある意味これこそ当時の最大の悩みで、その頃は社内に良くも悪くも売り上げ至上主義時代の慣習がまだまだ根強く残っており、それが結局はロスや損失を生む大きな要因になっていました。社長になって以来これまで手付かずだった事にもメスを入れていましたが人間は既得権益を守りたいもの、一朝一夕には行きませんでした。どんな会社でも企業風土の変革、ようは人の考え方を変えるのが最も難しいのです。
思い悩む日々の中、ある日ISOの事を知って興味を持ち、詳しく調べるうちに目から鱗が落ちる思いがしました。これこそ「環境対応」「他社との差別化」「企業風土の変革」、私の3つの大きな悩みを一挙に解決する処方箋、特効薬と確信したのです。
2001年、ISO14001認証取得を目指して社内を説き伏せプロジェクトチームを編成しましたが、当時の社内の反応はお世辞にも芳しいとは言えませんでした。
親父にも「そんなもんやって商売になるんか!?」と言われましたが(笑)、大体通常業務以外の面倒な事は極力したくないのがサラリーマン、いや人間の特徴ですから当然と言えば当然です。
ISOに関して当時の我々は素人集団につき、コンサルタントに指導に来て頂きましたが、この先生には大変お世話になりました。
先生の指導の下皆頑張ってくれ紆余曲折の末、翌2002年8月に審査に合格し取得に成功、私もそうですが、社員もやればできるんだと大きな自信に繋がったと思います。
お世話になった先生もお招きし、当時の事務局メンバーでささやかな祝宴を催しました。
その席で先生との雑談で、会社や業界の状況の話となり「非情に厳しい価格競争が続いている。」と正直に伝えたところ「何か起死回生の策はあるのですか?」と聞かれ、「ISO!」と即答しました(笑)。 当時の常務が「本当にこれが会社に定着すれば凄い力になると思う」と私の考えを代弁してくれましたが、元々ISOの理念は経営ツールとして利用できるものなのです。事業活動に活かすべく現在は営業の予算や不良在庫などのロス防止、物流費や人件費、残業代などの販管費の削減、あらゆる目標達成の為の数値管理に応用し、曲がりなりにもいわゆるPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回せるようになり、手前みそながらこれが業績アップに繋がったと自負しています。
ずっと置き去りだった不良在庫や各種ロス、赤字販売を解消すべくきちんとルールを決めてもそれが定着せず、継続出来ない事に悩んでいましたが、結局それらは人の考え方に起因するものです。ISO導入時も社内には抵抗勢力がいましたが、私の考えや方針についていけない人たちは自然に去っていきました。その後に入って来た新人たちにとってはISOをやっているのがごく当然の状態ですから何ら抵抗は無かったでしょう。いささか乱暴な言い方をすれば企業風土を変えるには究極には人を入れ替えるしか無いのです。
こうして振り返ってみてISOに取り組んで本当に良かったと改めて思いますが、我が社に触発されたわけでも無いでしょうがその後いくつかの同業者もISOを導入した、あるいは取得を目指して取り組んでいると言う話を小耳にはさみました。大変良い事だと思いましたが、継続出来ず途中で立ち消えになってしまったと言う話を聞いて、まるで昔のうちみたいと苦笑い…結局そうなってしまうのはトップに強い覚悟が無いからでしょう。
ただ、3つの悩みを解決と言いましたが他社との差別化、セールスポイントと言う部分では正直まだまだと感じています。環境に配慮した商品を積極的に拡販するよう努力していますが市場の反応は今一つ…私などISOに取り組む際の社内への説得では「そのうちにお客様が取引業者を選ぶ時に環境問題に前向きに取り組んでいるか?が大きな判断基準になる!」とまで大風呂敷を広げましたが、21年経った現在でもまだまだ皆さん、地球への優しさよりお値段重視です(苦笑)。
これからも環境に配慮した企業を目指し、継続的改善に取り組んでいく所存です。