FILE No. 800 800回記念「正義は勝つ(3)」
800回記念「正義は勝つ(3)」
2007年にホームページをリニューアルした際、目玉としてスタートしたこのブログが遂に800回目を迎える事となりました。1回目からお付き合い頂いてる方も今ではごく少数となりましたが(苦笑)、800回の節目に当たり15年ぶりにホームページそのものを見直しましたので是非ご覧ください。
さて、「社長の経営日誌」のタイトルに偽りあり?と年中批判にさらされながらここまで続いた当ブログ(初期の頃のを読んでください、最初は真面目に?書いていたのですよ笑)、記念すべき800回目は原点回帰の意味を込めてシリアスなテーマを取り上げ、11年ぶりに「正義は勝つ」(FILE No. 206, 207参照)のタイトルを復活させました。
弊社が毎年作成している中期経営計画書には基本理念として、
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- 世の正道を歩む企業であることを目指します。
- 常に人の大切さを見失わない企業であることを目指します。
- 常に豊かな感性ある企業であることを目指します。
の三項が記されています。
どんなに素晴らしい理念も正しい手法で実現しなくては意味がないので、特に1の「世の正道を歩む」については絶対に譲れない信念です。そう言えば引退された“商人伝道師”(FILE No.797 参照)水元仁志先生も「損得ではなく善悪で考えよ」を座右の銘とされていました。2011年に東日本大震災が起こった直後、「これはビジネスチャンスですよ」と被災地のスーパー向けのシステム販売を提案して来た会社を水元先生が一喝した話が印象深いのですが、弊社でも似たような話がありました。1995年1月17日、兵庫県南部で起こった阪神淡路大震災の影響で、我が大阪地区も一時期交通状態が麻痺し物流が混乱したのですが、当時いた営業部長のMが会議の席でこんな提案文書を配布しました。
「(前略)阪神淡路大震災の影響で大阪は物流網が寸断された状態ですが、反面これはビジネスチャンスです。これを機会にお得意先に従来のD1配送からD2配送への変更をお願いしましょう。」
ここで解説するとD0、D1、D2と言うのは受注から納品までのリードタイムを表す物流業界の専門用語で、D0は当日納品、D1は翌日、D2は翌々日の納品を指します。
我々包材屋の基本は今日頂いた注文(だいたい午前中が締めきり)を翌日納品するD1配送が主流ですが、震災による混乱を大義名分に火事場泥棒的にD2、つまり翌々日納品に移行しようと言うのがMの提案でした。
結局この話はいくつかのお得意先に根回ししたところ「アホか」と一蹴され、当時の上層部からも「おまえは会社を潰す気か!」とダメだしされてあっさり消滅、その頃私はまだ入社2年の一兵卒であまり口出し出来る立場でもありませんでしたが、提案内容以前に大阪と目と鼻の先で多くの犠牲が出ている状況をビジネスチャンスと捉える感覚に呆れました。因みにこのMはこれから8年後(既に私の社長時代)に子飼いの小悪党数人を引き連れてクーデターまがいの謀反を起こし独立し転落していくわけですが、やはり人間の本質と言うのはどんなに時間が過ぎてもそうそう変わらないと言う事でしょう。
90年代前半は弊社の売り上げも右肩上がり、95~96年がバブルのピークで年商は40億円を突破しました。お得意先の中で売り上げの第1位はその時点で20年近いお付き合いの多店舗展開されていたスーパーマーケットで、僅差の第2位がこちらも当時多店舗展開中の回転寿司チェーン店でした。この2社が言わば弊社にとっては東西の横綱的な存在で2社合わせて総売り上げの20%近くを占めていましたが、96年にその一角が崩れます。
トレイ・容器メーカーの最大手で弊社にとっても最大の仕入れ先であるF社が大規模な物流センターを立ち上げ、共配と称して我々代理店に対してその活用を提案して来ました。F社のトレイ・容器だけでなく様々なメーカー、商社を通じてレジ袋、ラップ、その他小物など包材屋が扱うものを全て調達し在庫、ピッキング、場合によっては得意先への配送もしてくれるので、問屋は倉庫スペースや物流経費の軽減となり営業のみに専念出来ると言うわけですが、アウトソーシングと言えば聞こえは良いものの、そこまで全てをメーカーに委ねてしまうのは問屋の機能を自ら放棄するようなもの、当然皆が躊躇しました。実際、このシステム構築を機にF社は末端ユーザーとの直接取引も開始しましたので、むしろ我々からしたら巨大な包材屋(競合先)が1社増えたようなものです。
F社は弊社に対しても共配への加盟を要請して来ましたが、特定メーカーの傘下となる事は問屋としてデメリットと判断しお断りすると、なんと弊社の売り上げ第9位の回転寿司屋に直接取り引きを持ちかけたのです。
実は元々、この回転寿司チェーンとのお取り引きはF社の紹介によるものでした。
当時から同社の商品開発力や提案力はずば抜けていたので、彼らが末端ユーザーを開拓、自社の有力代理店に紹介すると言う事が多く、その頃は弊社を取り組み先と考えていてくれていたようで(笑)この回転寿司屋も「デリバリーはタミヤがやりますので」と話をつけてくれたわけです。
その頃はWin-Win(今や死語?)の関係だったものの、自社が問屋機能を備えてしまうと話は別、「タミヤを外してうちと直接やりましょう、そうすれば〇%コストダウンが可能です。」と公然と手のひらを返して来ました。
まだ下っ端の私には上層部とF社、得意先の間でどんな話があったのか具体的にはわかりませんでしたが、随分揉めているという事だけは伝わって来ました。
別に私はメーカーがユーザーと直接取引する事を否定するつもりはありませんが、少なくとも代理店制度をとっているメーカーが、それも代理店が自社の商品をメインに販売している先にそれをやるのは商道徳に反しています。
F社の営業はうちの役員の前で「この回転寿司屋は元々うちが開発した客だから返してもらっただけ」と開き直ったそうで、その役員が後で「仲人が嫁さんに手を出すようなものだ」と吐き捨てるように言ったのを聞いて、うまい事を言うなと思わず笑ってしまいました(笑)。
結局はしごを外され大きな売り上げを失う事となり、そのダメージはボディブローのようにじわじわと効いてきました…。
(次回に続く)